執筆者:八木 博【シリコンバレー在住】

【シリコンバレー発】最近、Sunnyvaleのコンピューターショップが、移転大改装を行いました。Fry’sという名のお店で西海岸を中心に、コンピュータービジネスを手広くやっています。安売りの評判も高いのですが私が見る限りでは、目玉商品以外は決して安くありません。ただ、品揃えは非常に豊富で、秋葉原の部品屋さんの扱うようなコネクターなども揃えてあります。だから欲しい部品はたいていのものが揃います。

移転大改装の前は、薄暗いあまりきれいではないお店でしたが、移転後は大きくなりしかも、店の中にコーヒーとサンドイッチショップがど真ん中に入っているのです。お店の中の食べ物屋さんと、ビジネスの関係をまとめてみたいと思います。

●コーヒーを飲みながら本が選べる

私が今まで経験したお店で、扱っている品物が食べ物と関係ないのに食べ物が置かれているお店について、まとめてみます。まず、文房具やさんにはスナックが置いてあります。それから本屋さんとこのコンピューターショップには、コーヒーショップを兼ねた食べ物屋さんが入っています。

あえて意味を見出すとすれば、文房具屋さんについては、事務の仕事をしながらスナックをつまむこともあるでしょうとか、本を読みながらコーヒーを飲むこともあるでしょう、という感じでしょうか。それにしても、本屋さんは意味を見出せますが、コンピューターショップで食事が出来てしまうなんて、ちょっとした驚きです。

私の良く行く本屋さんは、フロアの真ん中にStarbacks Coffeeが店を出しています。以前は床に座り込んで本を読んでいる人が沢山いましたが、最近ではCoffee Shopで席に座り、商品の本を読んでいる人も多いのです。

人によっては、席からラップトップコンピューターの電源を取り、本を読みながらデータを打ち込んでいる人もいます。コーヒーを店の本にこぼしたらどうするのだろう、とか要らない心配までしつつ、私は様子を見ていました。

しかし、店の人々も、悠々としてそれらを許容しています。ショップで読んでいた本は、必ずしも買われるわけではなく、このCoffee Shopがどれほど売り上げに貢献しているのか、不思議でなりません。

●本屋に必須となったいすとソファー

しかし、このStarbacks Coffeeというコーヒー屋さんは、全米でも成長率の高いチェーンショップです。街中や、空港などいろいろなところで見掛けます。そこに立ち寄ったときに、ちょっと驚く光景がありました。

単にコーヒーを売るのではなく、どうやらコーヒーを飲みながら、ゆったりとした時間を送ることをめざして、詩集や自社製の書籍を置いているのです。

これであれば、Coffee Shopから見て本屋さんは、目的の一致する相手になるわけです。では本屋さんから見たら、どうなるのでしょうか。これは、商売上の法則があって売上高は、お客が店にどれだけ長く滞在するかによって影響を受けて、長いほど買い物額が増えるそうです。ですから、かなり前から、本屋さんにはいすや、ソファーが置かれていて、お客はそこで、書棚にある本を読み比べて、選択をすると言うものでした。

たしかに、米国の本は決して安くありませんし、同じような内容のものが、数多く出ていることも事実です。その中で、比較をする必要性があるので、時間がかかりCoffee Shopなどの需要が発生してきているように思います。

●お客の囲い込みの新しい手法

では、コンピューターショップと食べ物屋さんの関係は?これは、新しい問題です。たしかに広々した店で、パソコンなど買うと手押し車はとても重たくなります。それでもって、部品やソフトウェアや本などを買うと時間はかかる、しかも重たいものを押すのでおなかが減ってしまいます。これが、Shopの出てくる理由かなと言うことも考えています。

しかし、食べ物好きの国民性があるとは言え、このようなコンピューターショップで食事までするのは、お客を放さない戦略と考えるべきでしょう。お店でショッピングをしているとおなかが減ります。

それで、店の外へ出てしまうと、その日にはその店にはもう戻ってこないでしょう。そこで、昼食をとってもらう事によって、お客のおなかを満たしその後も同じ店内で、安心して買い物をしてもらう手段と考えられます。そうすると、新しい形のお客の囲い込みが始まったのかもしれません。

そいうえば、コンピューターショップには店の中央にスタインウェイのグランドピアノが置かれ、自動演奏と、人の演奏が交代で行われます。これも、店自身が単なる物売りから、次の時代への流れを読みながら、対応しているように見えてきます。広いワンフロアの出口には、80台のレジの並ぶカウンターがあります。

そこでさえ、行列が出来る驚きと、そんなに沢山来ているお客を、更に引き止めようと言う、シリコンバレーの商人のやることに、少なからぬショックを受けました。