日本海に輝く”交流の虹″ 1992年2月Libro
極東に新たな経済圏構想
今年4月のゴルバチョフ・ソ連大統領の訪日を控えて、シベリア、サハリン、沿海州のソ連と中国の東北地方、南北朝鮮、それに日海側の日本を含む「環日本海経済圏」という新たな構想が脚光を浴び始めています。面積では全アジアの20%を占め、人口では2億9000万人を数える巨大な経済空間で、日米韓の資金と技術.中国と北朝鮮の労働力、ソ連のエネルギーや森林資源を活用して極東に新たな経済の「成長センター」を構築する考えです。
極東・シベリアには無尽蔵の原油や天然ガスが眠るといわれるヤクーツクやサハリンなどエネルギー資源や前人未到のシベリア原始林が控えています.それにウラジオストック、ナホト力、ハバロフスク、ソ連と北朝鮮、中国の国境地帯の図們江デルタ、北朝鮮の清津などを開発して韓国の釜山や日本の新潟など日本海岸の都市を有機的に結び付け経済交流を拡大する計画です。
このなかで、ソ連の極東の自治体が力をいれているのが経済特区の設置です。中国の経済特区の成功にあやかったもので、市場経済の起爆剤として外資を導入する計画です。いまのところ極東ではナホトカが候補地として有力視されています。極東の唯一の対外貿易港としての歴史があり、港湾など基盤整備も他の自治体よりは進んでいるというのが理由のようです。ナホトカに続いて隣接のウラジオストックの開放も秒読み段階です。極東ソ連海軍の基地だったため開放が遅れていますが、既に米海車の友好訪問を受け入れたり、西側ビジネスマンの往来も頻繁になっています。
国境を越える共同開発
環日本海経済で注目されているのが韓国財閥の動きです。なかでも現代グループは積極的で鄭周永名誉会長は昨年からソ連を7回も訪問、マスコミのインタビューに対しても、「ヤクーツク油田から北朝鮮を経由したパイプラインの設置やスベトラヤ森林開発など規模も大きなシベリア開発に30億ドルの資金を投人する」と意欲を示しているようです。
中国とソ連。北朝鮮との国境にある図們江地域の共同闘発という構想も興味深いものです。計画では大型船が遡行できるよう図們江をしゅんせつ、河口から15キロ遡った中ソ朝3国の国境の町である防川市に国際港を建設する、ということです。北朝鮮とソ連に国境を接する政治的には微妙な地域でこれまで開発に手がつけられない状況だったのですが、ソ連のペレストロイカ、北朝鮮を取り巻ぐ情勢の変化など東西政治の劇的変化を受けて開放への道を開きつつあるといってよいでしょう。日本海岸の道府県にとっては、北朝鮮の開放を含めて、ナホトカ経済特区の着工やウラジオストックの開放、図們江開発のゴーサインが一気に進めば日本海は世界でももっとも経済往来の盛んな内海になるかもしれないという期待感が出てきているようです。(共同通信・伴武澄)