「親しくしていた日木人の教授に日本で働きたいと話していたら、リクルートのスーパーコンピューター研究所の所長になってくれないか、という話が舞い込んできた」-
米海軍大学校で応用数学の助教授だったメンデス博士(28)はことし4月1目、初代所長に就任、リクルートの収締役にも顔を連ねた。
 衛星通信を利用して日本のスーパーコンピューターを日米両国で使うユニークな新規事業だ。研究所の初期メンバーは15人。米国人を中心に英語を母国語とする人たちぱかり。メンデス博士は「日本語はもちろん必要だが、基礎研究に国柄は関係ない。面白い日米共同研究ができるチャンス」とやる気を見せる。
 ソニーに入社して1年のスイス人ラガディク氏(42)は10月、放送局などで使うプロ向け音響機器を総括する音響機器事業部長に昇格した。スイスの会社で培ったデジタルオーディオ技術と各国の放送局事情に精通した力量が買われた。
 外国人社員も単に英語ができるとか、海外の事柄に詳しいだけの助っ人、便利屋から、企業戦略の中枢を担う人材としての活躍へと変わってきた。日本の産業パワーが世界をリードしつつあることに加え、円高によりドル建て賃金が倍増したこともあって、ジャパニーズ・ドリームを求のる外国人は増える一方だ。
 法務省入国管理局のまとめでは、62年中に日本企業への就職が許可された外国人は3720人、2年前の約4倍に急増した。
 職域も英語教師とほぼ相場が決まっていたこれまでと違って、どんどん広がっている。13年前、初めて外国人を採用した神戸製鋼所には現在27人の外国人社員が働く。国際営業、エンジニアリングと職種も多様化、ことしからは研究所スタッフも大量採用する方針だ。
 「ファンドマネジャーや海外不動産関係など幅広くやってもらっている」(安田信託銀行)。「商品開発などで日本人にない発想で活躍してもらっている」(西武百貨店)-金融・証券や流通業界へも活動の場は広がっている。
 摩擦の芽も出始めている。雇用契約は出入国管理法の滞在期限が壁となって1年ごとの更新がほとんど。給与は大体年俸制だ。額は「日本人と全く同じ」(東芝、リコー)という企業もあるが、住宅手当や外国人手当などの形で日本人より、一、二割高いのが一般的。賃金格差が、日本人社員の不満へつながることも考えられる。
 外国人社員が一番苦労するのは人間関係。神戸製鋼所に13年間勤める米国人のヤング係長(38)は「一度仲間意識ができると居心地がよくなが、それまで時間がかかる。日本で働くには日本の慣行に合わせることも大切。嫌いなカラオヶでも上司に誘われたら、付き合わざるを得ない」という。
 だれでもがこうした悩みをくぐり抜けられるというわけははない。「町(諏訪市)でガイジンと指さされるのに耐えられなくなって辞めた」(セイコーエプソン)という例もある。
 日本航空では昨年大量採用した外国人スチュワーデスの退社が続いている。外国人採用に積極的でない組合とのいざこざが理由のようだ。
 各企業とも外国人を採用して日が浅く、人数も少ないためトラブルが深刻化する例はまだ多くない。しかし今後外国人雇用が本格化するのに伴って、期待はずれの企業、夢破れる外川人が増えるのは確実だ。