日本で働く外国人社員の数が目立って増えている。職種も語学教師はもとより営業マン、技術研究スタッフ、金融のディーラーヘと広がっている。モノ、カネに続く雇用の国際化時代。その実態や課題を迫ってみる。
 「ADAPT JAPAN」―企業の英語教育サービスをしているセルネート社が昨年11月に創刊した在日外国人留学生向けの英語の求人情報誌だ。創刊号には電機、自動車など日本企業10社の求人案内を載せて1万4000部刷った。留学生から引っ張りだこの予想外の人気だった。ことし5月末には、会社数を18社に増やして2万4000部を刷った。この1万部をハーバード大など米国の12校の卒業予定者にも郵送した。
 反応は早かった。7月に入ってパソコンや電子部品メーカーの大手セイコーエプソンには、米国から国際電話の問い合わせが相次いでいる。
 「コレクトコール(受信人払い)でもOKと記入したからでしょう」と長沼邦光人事部長は苦笑い。同社は現在20人の外国人社員を輪出業務などの拡大で本年度50人に増員する予定だ。
 日産自動車もことしに入って、外国人社員の採用に本腰を入れ始めた。日産はシェア(占有率)の長期低迷に歯止めをかけるため、各職場で「これまでの発想の流れを変えよう」と呼び掛けている。中途採用、外国人採用という外からの刺激で組織の活性化を図る狙いだ。「わが社の車が売れなくなってきたのは、これまでの発想が世の中に通用しなくなってきたから。仕事のやり方、技術開発の方向などすべての分野でインパクトがほしい。それが強く期待できるのが外国人だ」と阿部哲明採用課長。
 激烈な国際クルマ戦争の中で、現在事務系4人、技術系3人の外国人社員を1年で倍増、3年後には数十人単位で採用出来たらという。
 那須高原に広がる田園の一角。ブルーの屋根の白い建物が並ぶ東芝那須工場。大阪大学理学部大学院から今年入社したベルギー人、W・オヘラートさん(27)は、6月からここの医療機器研究所で超音波診断装置の開発に携わっている。
 オランダの大学で修士課程を終え、阪大ではレーザー分光学を専攻。「昨年就職活動で、東芝を回ったら外国人の採用に積極的で入社が決まった。日本の企業は専攻分野にかかわりなくいろんなことが勉強できる。定年まで働きたい」と満足げ。
 東芝の方は[将来日本人だけでは技術者が足りなくなるので、今から備えておく必要がある」(黒岩宏行人事教育部長)との判断だ。
 日木企業の積極的な外国人採用傾向は、共同通信社がこのほど実施した調査でも浮彫になった主要120社企業のうち、外国人を現在採用しているのは51社。今後採用に前向きな社は71社に達している。
 理由には、組織の活性化、国際化への対応、技術開発力の強化―が上位に挙がっている。
 現在、外国人社員ゼロの東レも意欲的な企業の一つ。本社の中堅技術者空洞化を防ぐため、タイ、マレーシアなどの子会社で働く現地採用の技術者を本社に呼び寄せることを検討中だ。先端技術分野での外国人研究者採用計画も練っている。「事業のグローバル化に対応して、日本人にこだわらない採用計画が全企業謫な課題になっている」と向井林太郎採用課長は開設。
 言葉や慣習の違いを超えて外国人に門戸を広げる企業。それは世界市場をめぐるビジネスが一段と激化している表れともいえそうだ。