高校の無償化が議論されている中で、考えされられることに気付いた。というより、専門家にとっては自明の理であるのかもしれない。まず、中等教育が無償化されることは悪いことではないと考えたが、なんで私学も無償化されるのか疑問が残った。私立高校に無償で通えるのなら「いい私立高校」を目指す中学生が増えて、公立高校が淘汰されるのは必然。
 知らなかったのは、すでに国の制度として私学に通う生徒への支援金制度があることであり、ほとんどの世帯では「無料化」が実現していることである。大阪府では大阪維新の党によって、すでに私立高校への支援金金が増えて、公立高校の淘汰が始まっており、東京都でも同じことが起きている。これって教育の民営化ではないか。そして教育の機会均等が失われるのではないか。都市部では比較的富裕層が多い地区と貧困層が多い地区が歴然としている。富裕層の過程ではレベルの高い学校に子弟を送りたいという願望が強く、私立学校への受験が当たり前になっている。
 そもそも、無料化されるのであれば、私学の公立化といっていいかもしれない。国会での与野党の議論ではそんなことは一切議論されていない。つまり、多くの私学は中高一貫校が少なくない。義務教育でない私立高校が無償化されて、なぜ私立中学の無償化に議論が及ばないのかということである。
 現在の国の私立高校の支援金制度について調べてみた。年収が590万円未満の家庭では39万8000円である。高知県ではこれに年収350万円以下の家庭に大して3万6000円を支援している。土佐高校の年間の授業料は48万円、これに対して高知県立高校は118,800円。差額は36万円弱だから、年収590万円未満の家庭なら、支援金の範囲内で私立高校に通えることになっている。
 自・公と維新の会で合意したのは、年収制限を撤廃したうえで、支援額を私学授業料平均の45.7万円に引き上げたこと。大騒ぎするような話ではない。問題はこれによって、学校の民営化が一層進んでしまうということではないか。
 数日前開かれた「若手教師と議員の集い」に提出された資料で驚いたのは2021年の高知県の私学中学校進学率である。47都道府県のトップは東京都で25.6%と断トツに高いが、第二位は高知県の17.9%。「高知市内では3割4割が受験する」という。10%を超えるのは京都府、奈良県、神奈川県、広島県だけ、同じ四国でも香川県3.4%、愛媛県2.9%の5倍以上だからすさまじい。
 一方で公立高校の定員割れが34校中31校で全国トップなのだ。公立トップレベルの追手前高校にいたっては昨年、定員280人に対して80人の定員割れだった。この30年でも室戸岬水産高校、大栃高校(山田高校に統合)、仁淀川高校(佐川高校に統合)、須崎高校と須崎工業高校が統合して須崎総合高校に、高知西と高知南が統合して国際高校に、安芸桜ガ丘高校(安芸高校に統合)と6校も減っている。