イギリスの総選挙で労働党が政権に復活した。多くのメディアは労働党が大勝したのではなく、保守党が自壊したと論評した。今の新自由主義的経済体制をつくったのはサーチャー保守政権だった。1970年代後半のことである。「ゆりかごから墓場まで」という標語が象徴されるように、それまでの労働党が企業の国有化や福祉政策を進め過ぎたためにイギリス経済のダイナミズムが失われていた。それから約半世紀、今度は資本主義の暴走への批判が高まっている。貧富の格差拡大が進んでいるためである。新労働党は水道の公営化初め、経済政策を180度転換させるだろう。

フランスの総選挙では第一回目投票で極右政党「国民連合」が第一党にのし上がった。しかし、二回目投票では左派連合が事前の予測を覆して国民連合を抑えて最大勢力になり、マクロン大統領率いる中道の与党連合が2位になった。選挙での争点は移民問題だった。移民排斥を求めた右派が第一回目投票で圧勝した背景である。国民の中に極右政権への懸念が広がり、二回目の大逆転現象が起きた。フランス国会はこれまで対立していた左派と中道との呉越同舟となり、安定した政権運営は難しくなる。

イランでも地すべりが起きた。9年ぶりに行われた大統領選の決選投票で内務省は6日、改革派のペゼシュキアン元保健相が当選した。この選挙は、ライシ前大統領が5月にヘリコプター墜落事故で死亡したことを受けて、行われた。ペゼシュキアン氏はイランの世界からの「孤立」解消と「団結と結束」を約束した。具体的には2015年西側と合意した核開発をめぐる「建設的な交渉」の復活だが、2018年、当時のトランプ政権がその合意から一方的に離脱を宣言したことから交渉は停滞している。イランではホメイニ革命から西側と対立する政権が続いていただけに穏健派のペゼシュキア氏の登場は歓迎すべき動きであろうが、アメリカ大統領選でトランプ氏が復活すれば、どうなるのか不透明。

アメリカ大統領選ではこのまま推移するとトランプ氏復活がほぼ確実。地すべり的政権交代はアメリカでも起きそうなのだアメリカ第一主義を掲げ、地球温暖化にも消極的。「ウクライナ問題は24時間で解決できる」と豪語している。バイデン氏が勝利すればアメリカンの亀裂はさらに深まり、「内戦」すら予想されていたが、それだけは避けられそうだ。しかし、最大の懸案である米中対立はさらに深まるだろう。

問題は日本。東京都知事選では地すべりは起きなかった。国民の中に政権交代の期待感は強いものの、自民党への支持率が大幅に低下する中で、もはや自浄能力はゼロ、野党側の結束も不十分。地盤は十二分に軟弱なのだが・・・。