執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】

●明石大橋を渋滞させてみよう

明石大橋が4月6日開通する。関西のマスコミは明石大橋の企画記事で持ちきりだ。大和銀総研が1500億円経済効果があるとはやし、まるで開通で関西経済が新たなエポックに入るかのようなはしゃぎぶりだ。

そんな議論に水を差すつもりはないが、1兆円近くを建設費につぎ込んだこの橋を本気で起爆剤にしたいならば、1カ月程度は通行料を無料にするぐらいの大盤振る舞いをすべきだと考えた。どうせ50年間もの長い時間をかけて建設費を償還するなら1カ月ぐらいただにしても経営に影響はあるまい。

明石大橋の通行料は垂水-淡路間が2600円。垂水-鳴門間は5800円である。本四公団が推定する1日の通行量は1万7000台だから5800円をだだにするコストは1日当たりざっと1億円である。30日でたった30億円でしかない。春の行楽シーズンに通行料をただにすれば、明石大橋が渋滞すること受け合いである。

明石大橋を渋滞にするほどの車の通行量は知らないが、家族連れのマイカーならば淡路島や徳島に最低でも1万円程度の消費をして帰るだろう。四国の人々は日帰りで神戸のハーバーサーカスにいくかもしれない。彼らはもっとお金を落としていくだろうと考えれば、橋の双方の経済に与える効果は、30億円では効かないはずだ。

都会のデパートの駐車場料金は2000円程度の買い物をすれば基本的にただである。ただでなければだれも自家用車で乗り付けることはない。駐車料金をただにすることでデパートで買い物をしてもらおうというのが魂胆である。明石大橋も同じ発想にたてば、通行量が1日1万7000台程度では終わらなくなるだろうと考えている。

●リピーターに期待しよう

通行料をただにする効果はそれだけでない。関西の人々にとって徳島はそんなになじみのある場所ではない。だが一度面白いことが分かれば、必ずリピーターが出る。ディズニーランドと同じである。「祖谷のかずら橋」や吉野川流域の「大歩危小歩危」も実にいいところだし、阿南海岸でのサーフィンやウミガメの出産風景も悪くない。ただいままで多くの人の目に触れることがなかっただけである。

もしリピーター現象が起きなければ、それは徳島が悪いし、香川が悪いということになる。努力しないで人が来ると考える方が甘い。関西の人が二度と明石大橋を渡ろうと考えなくなることはないと思うが、それはそれで自業自得としかいいようがない。机上の空論で観光客に期待しても仕方がないことでなないだろうか。

●瀬戸大橋の下を今も10分おきに運航されるフェリー

瀬戸大橋が開通したのは、ちょうど10年前の1988年である。当初から採算が合うか疑問視されていた巨大構築物である。どうして採算が合わないか考えると通行料金を建築費から逆算したからだ。シミュレーションした通行量でわり算した金額が通行料金になった。明石大橋も実は同じ轍を踏もうとしている。

マスコミはどこも報道しないが、高松と宇野間には瀬戸大橋開通10年後も、カーフェリー3社が開通前と同じ間隔で運航している。宇高国道フェリーと四国フェリーはそれぞれ30分に1本、本四フェリーは45分に1本だ。いってみれば10分ごとにフェリーが運航されている勘定だ。

どうして生き残っているのか、理由は簡単である。乗用車の運賃が4000円強と瀬戸大橋の通行料の3分の2と格安だからだ。

明石大橋に夢がない理由をもうひとつ挙げたい。香港で昨年4月、開通した青馬大橋は1377メートル。世界最長の鉄道併用橋である。この橋の開通を前にした「青馬大橋ウオーキング」では、歩く人々からお金を取った。強要したのではない。寄付金を募った。ユニークなのは寄付金が多い順に新聞に名前を掲載することを予告したことだ。集まった金は障害者施設と老人施設に寄贈された。実に豊かな発想ではないか。