番外「きょうはヨロズ記念日」
執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】
香川県の県紙である四国新聞の6月11日付一面のコラム「一日一言」に萬晩報のことが報じられた。「新聞紙のある風景」と題して取り上げてくれた。俵万智の「サラダ記念日」ではないが、「きょうはヨロズ記念日」。コラムを転載させてもらう。
●一日一言(6月11日付四国新聞)「新聞紙のある風景」
「新聞のある風景」という写真コンテストが作品を募集している。日本新聞協会主催で今年が2回目。昨年のグランプリは駅のホームで新聞を読む若い女性だった。こんな風景が懐かしくなる時代がくる▲ほかの受賞作は雨中の新聞配達バイク、新聞紙で包んだ花束を持つ老女、というものだった。いずれも「新聞」というよりは「新聞紙のある風景」。しかし新聞が紙である時代もやがて終わると予感する出来事が続いている▲明治から大正にかけて人気を集めた新聞に「萬朝報」があった。翻案小説でも活躍した黒岩涙香が創刊し、一時は日本最大部数を誇った。今年、その名を思い起こさせる「萬晩報」が創刊され、ひそかに人気になっている▲創刊といっても、流行のインターネット上でのことだから、新聞と呼べるかどうかは分からない。しかし毎日、毎日、何か新しい情報が自分のメールボックスに届けられてくるというシステムはまさに日刊新聞そのものだ▲編集発行人は共同通信社経済部デスクの伴武澄さん。アジア経済専門家としてすでに3冊の著書があるが、もっと読者と議論したいと今年1月、インターネット「萬晩報」を創刊した。名前は先輩への畏敬を込めたパロディ▲毎日、毎回、ほぼ2000字の原稿を書き続け、最初は友人、知人20人に配信した。余技だからもちろん無料。アジア経済や日本の構造問題に関する研究を深められれば、くらいの軽い気持ちだったが、1カ月で希望者が1000人を超えて本人も驚いた▲創刊から5カ月目の昨日の配信希望者は4114人。こんな事例がほかにも増えている。伝えたいことがあり、伝える意欲さえあれば、だれでも世界中に伝えられる。そんな時代がもうきている。「新聞のある風景」写真に、新聞紙が登場しない時代の足音が聞こえる。