執筆者:中野 有【とっとり総研主任研究員】

●三海連携軸からユーラシアランドブリッジへ

21世紀はどんな時代になるのであろうか。地域の活性化にとってどのような可能性を秘めているのか。夢のある環日本海の交流を模索してみたい。グローバリゼーションが加速され国際輸送にも大きな進歩が見られ、アメリカの東海岸やヨーロッパに数時間のフライトで到達できると言われている。
では、太平洋の貨物をヨーロッパに輸送する場合、時間とコストの面で最も効率的な輸送手段はどうなのか。例えば、太平洋に面する高知の貨物を北米ルートやインド洋・大西洋ルートでヨーロッパに輸送する手段がある。しかし、地球儀を見れば明らかなように、最短距離は太平洋・瀬戸内海・日本海の3つの海を経てユーラシア(アジアとヨーロッパ)の架け橋、すなわちユーラシアランドブリッジを経由することである。
21世紀の国際物流として三海(日本海・瀬戸内海・太平洋)連携軸からユーラシアランドブリッジ構想(国連等が研究中)が具体化されれば、境港が環日本海交流の拠点のみならず、太平洋とヨーロッパをつなぐゲートウェーとしての役割を担うのではないだろうか。このように環日本海の交流をグローバルな視点より考えると夢が広がる。
●琿春-羅津間80kmに高速道路を

環日本海交流の原点は、中国と日本を相互補完的に連携させることであり、その波及効果として朝鮮半島の信頼醸成が形成されたり、中国東北、極東ロシア、南北朝鮮とモンゴルを含むエリアに自然発生的経済圏が形成されることにある。
しかし、この構想が叫ばれ国連が本格的に関与して10年の歳月が流れたが、日本政府を動かすだけの大きな胎動が伝わってこない。この根底には、冷たい戦争が終結し歴史の回転の舞台は国際協調に移ったが、北東アジアには未だに冷戦構造が残っているという現実がある。その氷のような現実を溶かす奇策は存在しないのであろうか。
それは、中国の吉林省や黒竜江省の背後にあるモンゴルやロシア、ひいてはヨーロッパの物流が日本海に向けて集積する道を整備することである。その道とは、中国の琿春と北朝鮮の日本海に面する羅津間の約80kmの道である。中国、北朝鮮、ロシアの国境近くのこの道は、国家の戦略上辺境の道として位置付けられており、実際の数倍の距離感が感ぜられる。
もしこの道にドイツのアウトバーンまでいかなくとも4車線の高速道路が建設され、加えて簡単な手続きで北朝鮮への国境を越えることができれば中国から日本海へ1時間で到達することができる。そうすれば中国と日本の人と物の流れが本格化し、境港をはじめとする日本海側の活性化に役立ち、おそらくその波及効果は計り知れないものになると考えられる。
●北東アジアのスエズ運河

琿春と羅津(北朝鮮の日本海に接する港)を結ぶこの高速道建設の波及効果として中国の農産物や木材の原材料に加え、琿春の工業団地で外資と豊富な労働力で作られた製品が羅津港のある日本海に向けられ、境港等の日本海側の港との物流の活性化につながるのである。
またモンゴルが日本海へのアクセスを可能ならしめ、ユーラシアランドブリッジ構想が実現したあかつきにはヨーロッパとアジア・太平洋を結ぶ最重要拠点になると考えられる。まさに北東アジアのスエズやパナマ運河のような物流の拠点の役割を担うであろう。
一方、北東アジアを取り巻く冷徹な国際情勢に目を向けてみると、軍事、或いは経済協力を通じ平和を構築するのか、そのクロスロードが目前に迫りつつある。従って今、環日本海交流の原点に戻り中国と北朝鮮の高速道の建設を国際的支援で行うことが必要ではないだろうか。
この北東アジアのスエズ運河が国際協調の下で完成したあかつきには、太平洋とヨーロッパがアジアを経由して最短距離で繋がるだろう。このように国家や民族を超越した多国間の協力による広大な連携構想を通じ境港が環日本海のゲートウェーとして注目されるのではないだろうか。(なかの・たもつ)
中野さんへnakanot@tottori-torc.or.jp
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