執筆者:中野 有【(財)国際平和協会理事】

21世紀の白いカンバスに夢とロマンの生活空間を、地域、日本、地球的視点で描く。国籍を越え、一国の平和のみならず地球環境問題などを考慮に入れ、地球市民としての活動に携わる。これは理想である。

現在の日本は不況にあえぎ、空前の高失業率で明日の生活のことで頭がいっぱいで未来志向的なことを考える暇がないという人も多いだろう。一方、一人当たりの所得では欧米にキャッチアップして、目標を失った日本は次なる目標として、経済を基軸とした米国型グローバルスタンダードによる発展を追求するのではなく、白人のみならずアジア人やアフリカ人の多様性を尊重した「共生圏」(シンバイオテックスコミュニティー)の構築に努力すべきだという大いなる理想を掲げる人もいるだろう。

とにかく、今までの価値観でない新たなる理想と新国際秩序が求められている。この想いは9.11の国際テロ後、ますます強くなりつつあるように感ぜられる。

アフガン復興支援会議で「世界の緒方」が共同議長として、軍事でなく経済協力によって世界の平和に貢献するという新しい協力のあり方を「日本発」として示された。かつてこれほど日本が国際貢献という重要な役割を果たしているという自信を、市民レベルで享受することがあったであろうか。

さて、では具体的如何にして国際貢献という日々の生活とかけ離れた空間での活動に携わることができるのであろうか。

生活の手段として、民間か公務員の形態の2つに分けられるであろう。民間には、専門職、経営者、サラリーマン等に分けられるであろう。終身雇用として、同じ組織、会社で人生を全うするというのが主流であった。これは過去の話である。今は、いくつかの組織、会社で働いたり、またリストラや失業で否応なく仕事を変えなければならなかったり、また平均寿命が延びたことでボランティア等の活動を通じ、第2の人生を楽しむのが常である。民間でも公務員でも、とかく世間は窮屈で自由が利かないのが現実だろう。そんな社会環境の中でも「地球益」の活動に興味を持っている人も多いだろう。最近、「官」でも「民」でもない「公」であるNGOやNPOの活動が注目されつつあるのは、理想を追う人が増えてきたからであろう。誰もが考える仕事の理想とは、生活の安定と社会的な貢献のため満足できる汗をかくことであろう。

国際公務員、民間企業、米国のシンクタンク、海外コンサルタントに勤務して、また同時並行的に国際NGOの活動に関わってきた。そこで学んだことは、国際公務員ではできないことは民間で可能で(その反対もある)、その両方ともできないことは国際NGOで可能であるように、それぞれの活動には盲点もあるがネットワークやリンケージをうまく生かせば、理想とする仕事が見えてくるということである。

坂本竜馬は、脱藩人を集め海援隊や亀山社中を作った。また、経済協力という共通の利益の合致点を追求し、「薩長同盟」を成立させた。竜馬の組織は、窮屈な組織を否定し、自由に活動ができるという意味で、現在の国際NGOやNPOに類似しているように思われる。また、脱藩人こそ今風の一部の気骨のあるフリーターであるのでは。違いは、今の日本式NGOやNPOは利益を追求しないが、竜馬が理想とした組織はある程度利益を追求しながらも、世のため貢献したことである。米国のNGOやNPOは、完全なボランティアでなく、活動経費プラス位はついてくるものであると思う。

これからの 最も充実した生き方とは、民や官に勤務しながら「地球益」の活動に関わることでないだろうか。最高の生き方とは、組織のしがらみを越え、国際NGOやNPOの一員として自由奔放に生きることであろう。150年前に、竜馬はそれを実践したのであろうが、おそらく今求められているのは、経済協力のみならず、地球市民が共有できる「共生圏」SymbioticCommunityをいかに実現するかであろう。

中野さんにメールは nakano@csr.gr.jp