気が付いてみれば「選挙権20歳」は日本だけ
執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】
若者が政治改革を目指すNPO「Rights」が主催するシンポジウムに出席して、分かったのは世界のほとんどの国で参政権が18歳になっているということである。日本など20歳以上は「例外的存在」であることに初めて気付いた。
オーストラリアから参加した青年によれば「参政権が21歳から18歳に引き下げられたのはベトナム戦争の時だ」というから四半世紀以上も前のことである。理由は「ベトナム派兵のため、徴兵制度が始まり、参政権もないのに徴兵するのはおかしいという意見が多数を占めたからだ」という。アメリカでも同じ事が起きていたそうだ。
明治当初、日本の参政権は一定の納税額以上の男子に限られていたが、大正デモクラシーで「25歳以上の男子」となり、戦後は女性にも参政権が拡大して年齢も20歳に引き下げられた。その後、参政権年齢の引き下げ議論がなかったわけではない。民主党は昨年「引き下げ法案」を国会に提出した。しかし、本音ベースでいえば、だれも制度変更を現実のものとはとらえてこなかった。
この間、高校進学率はほぼ100%となり、誰も彼もが大学に入れるようになった。日本人の高学歴は急速に進み、経済は世界のトップレベルに達したのだが、政治意識は進歩したとはいえない。参政権年齢を引き下げれば、政治意識が高まるというわけでは毛頭ないが、世界中が参政権年齢を相次いで引き下げていた時、日本は完全にフリーズ状態だったことだけは確かである。
恐ろしいことに、戦後憲法制定に遡れば60年もの間、われわれの思考が停止していたともいえる。
アメリカ・ペンシルベニア州では昨年、18歳の町長が誕生して話題を呼んだ。これもただ若ければよいというこのでもない。しかし、アメリカの自治体では、被参政権までもが18歳以上という場所があるところに驚きがあった。
日本でもこの夏、秋田県岩城町で住民投票の対象者を18歳まで広げて実施し、長野県南部の平谷村では中学生にまで引き下げる方針を決めている。いずれも町村合併の是非を問う住民投票であるため、将来も町村を担う年齢層の意見も聞く必要があるとの判断があった。
これまで日本の選挙改革で、衆院選挙に比例代表制が導入されたり、区割りの変更が行われたりした。政治的変化がなかったわけではないし、一定の前進ととらえていい。かつてのような選挙区選挙に逆流することはもはやないはずだ。しかし選挙改革がそれだけで終わっては寂しい。
参政権や被参政権の年齢は公選法で定められているが、この際、とりあえず地方選挙に関しては地方に分権してはどうだろうか。住民投票でできたものが、首長選挙や地方議会選挙でできないはずはない。
またアメリカにある選挙人登録というもの試してみる価値はありやしないだろうか。事前に投票の意志の有無を確認し、意志を表明した人だけに投票用紙が配布される制度である。もっともアメリカで選挙人登録すると、「陪審員」に選ばれて裁判所に一定の期間拘束されるという義務もつきまとうのだが……。
さらに首長選挙でが、過半数を獲得しない選挙はやり直すとか、白票を「有効票」ととらえて、白票が一定割合以上の場合の選挙のあり方を考えるとかいくらでもアイデアは出てきそうだ。
「Rights」というNPOは90年代後半から始まった、選挙の際の立候補者による「公開討論会」を全国で広げてきたリンカーン・フォーラムの流れをくんだ若者たちが立ち上げた組織である。2月には国会議員を巻き込んだ「選挙権に引き下げを考える国会集会」を開催、3月「ユースインターンシップ」では12歳から19歳の19人を国会議員の事務所にインターンとして送りこんだ。
先週末行われたのは「Rights国際フォーラム2002~政治でつなぐ世界の若者~」。国立オリンピック記念青少年総合センターで、10代、20代で活躍するオーストラリア、スウェーデン、ドイツの若者とともに、それぞれの社会参加、政治参加についてパネルディスカッションした。
NPO「Rights」はhttp://www.rights.or.jp/