ゲンジから見た「西の魔女とヒガシノマジョ」
2008年06月25日(水)萬晩報通信員 園田 義明
我が家は四人と一匹の家族。
ヨメと二人の中学生の娘。
それにミニチュアダックスまでもがメス。
女だらけの家の中で、
「ゲンジ」のようなオヤジに居場所などあるはずもなく、
今日も一人で書斎に引きこもっている。
本の山に囲まれていると、
それはそれで気持ちいいのだが、
気になるのは女どもの読書嫌い。
新聞をひろげていると、ワンコは決まって邪魔をする。
二人の娘はいずれもジャニーズ狂い。
読む本はせいぜい都市伝説どまり。
ヨメが本を読んでいる姿は今まで一度も見たことがない。
せいぜいファッション雑誌がそこらに転がっている程度。
子供に「勉強しなさい!」と言う前に、
「オメーも本ぐらい読めよ」とついつい言いたくなる。
もはや口癖になってしまった。
「こやつらが本を好きになるきっかけはないものか。」
そんなことを周囲に洩らしていると、
親友が一冊の本を薦めてくれた。
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)。
タイミングよく映画も公開されるとのこと。
なにやら梨木さんと私とは共通点が多いようだ。
同じ鹿児島県人の血が流れ、カヤック乗りでもあるらしい。
フォールディングカヤックを使っているところを見ると、
私同様、のんびりツーリング派なのでしょう。
たまたま新宿で用事があり、ついでに映画を観てきた。
その日、帰宅すると本も到着していた。
この物語は、わかる人とわからない人がはっきり分かれるだろう。
特にくそまじめな男はダメかもしれない。
少なくとも、学校や仕事を「エスケープ」して、
芝生の上に寝転がって、
ボケッと流れる雲を見ていた経験がある人にはお勧めかな。
主人公は中学生のまいと英国人のおばあちゃん。
魔女の特殊な能力は、
おばあちゃんからまいに伝授されるだけで、
まいのママは置いてけぼり。
おそらくママは梨木さんが同世代の女性を意識して書いたのだろう。
確かにこの世代の女性を眺めると、
「オールド・ファッション」への反発こそあれ、
そこに普遍的な知恵や知識を見出す感性が欠落しているように見える。
それで空っぽになっちゃって、
悲しいかな、病んでいく人だっている。
古今東西、女はみんな魔女だった。
誰だって知恵や知識を受け継いできたのだ。
おばあちゃん役にサチ・パーカーを起用したのはお見事。
本名サチコのママはシャーリー・マクレーン。
おばあちゃんは今なおゲール語が残るカナダ・ノバスコシア州の人。
手嶌葵さんの主題歌「虹」も素晴らしいが、
ゲール語で歌い継がれてきた
ケルトのトラディショナル・ソングを一曲でも採用していれば、
この映画の奥行が深まったはず。
八百万の神々を世界に解き放つことだってできたかもしれない。
さて、この本をまた何気に居間のテーブルに置いておこう。
今度こそ、誰かが読んでくれるだろうか。
▼関連サイト
梨木香歩『西の魔女が死んだ』新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/book/125332/
映画『西の魔女が死んだ』オフィシャルサイト
http://nishimajo.com/top.html
筑摩書房「水辺にて」梨木香歩インタヴュー
http://www.chikumashobo.co.jp/special/water/
園田義明ホームページ http://www.sonoda-yoshiaki.com/
園田さんにメール mailto:yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp