六本木で走り始めたEVタクシー
2010年4月26日、東京の町を日本交通マークのEVタクシーが走り始めた。アメリカのEVベンチャー企業、ベタープレイスと合同で3台のEVタクシーを3カ月運行する実証実験だ。
このEVタクシーの面白さは、時間のかかる充電に代えて電池そのものを取り換えるという発想である。ベタープレイスは電気自動車の電池をリースにすることにより、電池自動車の車体価格を低く抑えるとともに充電の手間を省けるとしている。
現在の電気自動車の最大の欠点は走行距離の短さ。タクシーは1日に約300キロも走るので、タクシーには向かないと考えられていたが、瞬時に電池を交換することで逆に走行距離のハンデを乗り越えたといえよう。
車両は日産自動車の小型SUV「デュアリス」を,東京アールアンドデーが改造した。交換可能な蓄電池は米A123Systems,Inc.製のLiイオン2次電池で,容量は17kWh。1回の充電当たりの走行距離は,「70~80km程度」とされる。六本木ヒルズのタクシー乗り場を起点とし、港区周辺への実車営業を行う。
現段階で、電池のコストがEVの最大の問題といわれる。一方で走行コスト(電気代)はガソリン車の10分の1程度と経済的だ。自家用車と比べて1日の走行距離が長いタクシーは燃料にかかるコストが高い分、桁違いに安い走行コストによって、高い電池の導入コストを吸収できるできそうだ。
ベタープレイスによれば、「大量導入が進めばバッテリーコストと電気代、ステーション償却費の合計はLPG燃料コストを下回る。車種が少ないのでバッテリーの種類を絞れることもタクシーの利点」という。
実証実験後は、日本交通が2011年末までに十数台のEVタクシーで営業を続ける考えだ。
日産自動車のゴーン社長は電気自動車の販売に際して「電池のリース方式」を提案している。このリースという発想をさらに一歩進めたのが「電池交換方式」といえそうだ。この電池を交換するという発想は、電池をエネルギーの「容器」だと考えれば分かりやすい。ビール瓶や一升瓶は有料だが、1回購入すれば、リターナブル容器として摩耗するまで利用者に共有される。問題は電池という容器の価格が100万円とか200万円と高価な点。ハードルは決して低くない。