日産自動車の「リーフ」が12月20日発売される。エコカーの分野ではトヨタのハイブリッド車プリウスが先行し、国内市場では1年以上も販売台数トップを走っている。日産はハイブリッドではなく、エンジンの力をまったく使用しない本格的な電気自動車に社運を賭けた。ようやく電気自動車時代の幕開けだと思っていたら、思わぬ落とし穴に気付いた。ほぼ同時に販売を開始したアメリカでは日本の価格の3割近くも安く設定されていて、米政府の補助金を加味すれば、ガソリン車と遜色のない価格なのである。
 日本の価格は376万円。補助金は78万円だから、実質で298万円。日産のゴーン会長は「300万円を切った」ことを自慢にしていた。2011年度までは自動車重量税と取得税が免税で、購入した翌年度は自動車税も半額になるから、ガソリン車を購入する場合と較べてメリットは決して小さくない。筆者も当初はそう考えた。
 ところが、3月31日に発表されたアメリカでのリーフの販売価格は3万2780ドル(306万円、1ドル=93円40銭当時)。7500ドルの税控除を差し引くと、実質的な販売価格は2万5280ドル(236万円、同)だった。3月末の円ドルレートで計算しても70万円、2割弱も安かったのである。

 本来ならこの時点で問題提起すべきだったが、その価格差に気付かなかった。現実に今日の為替レートである1ドル=83円で換算したアメリカでの販売価格は272万円。さらに価格差は開き、日本より28%、104万円も安いとなれば話は別である。本来はもっと安く価格設定ができたのではないかと勘繰りたくなる。
 日米のリーフの価格差について日産自動車に質問すれば、「アメリカでの価格発表後に円高が進んだ」という説明も予想されるが、これほど日本の消費者を愚弄した話はないだろう。
 今年度のリーフの目標販売台数の国内6000台、アメリカ2万台はいずれも予約だけで埋まり、アメリカでは予約の受付を一時的に中断するほどの人気だという。そりゃ当たり前だろう。電気自動車の本格的5人乗りファミリーカーが210万円で買えるのだから。(伴 武澄)