急増する一人暮らしの行く末にあるもの
7月、バスで上京した。早朝に新宿に到着したので、地下のドトールで一人、朝食をとった。7時すぎなのに満員である。出勤前のひと時をすごしているのであろうが、客もみんな一人である。新聞を読んだりパソコンを叩いたりしている。
スタンドで買った朝日新聞の「天声人語」に興味深いコラムがあった。
半世紀前の「今日の料理」の最初のおかずの分量は6人前だったが、今では2人前になっているというのだ。一年前の国勢調査によると、一人暮らし世帯が31%となり、家族世帯(夫婦と子ども)の29%を初めて上回った。夫婦のみは20%なのだそうだ。
一人暮らしには当然、お年寄りも含まれるが、都会の一人暮らしが急増している。
人間は群れで暮らしてきた歴史を持つ。一夫一妻はもともとあったのだろうが、核家族化したのは産業革命以降のこと。農村から都市に人々が流入してスラムに住み、一族で群れることをやめてしまった。スラムでは住環境から世帯を超えて住むことは不可能だったのである。
賀川豊彦の『貧民心理の研究』などによると、スラムでは「ねた者夫婦」という形態が横行した。夫婦の絆すら薄くなった。一世紀近くも前の話である。それでも子どもは生まれる。スラムでは主婦が家を守るなどという余裕がない。子どもを預かる託児などという生業もそうやって誕生した。
そうして親に面倒をみてもらえなかった子どもには、親の面倒をみる義務もなくなり、親の面倒も他人任せになった。子どもの養育も親の介護も他人任せ。ここらに家族崩壊の前兆が起こる。