土佐山日記14 エネルギー自給村
土佐山で小水力発電の計画が浮上している。5月に高知新聞が一面トップで書いていたから記憶のある方も少なくないと思う。鏡川の支流である高川川の上流地点に格好の発電可能サイトが見つかったのだ。そのことを思い出していたら、その昔、書いたコラムが偶然出てきたので再掲したい。
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エネルギーを自給できる村をつくれたら、と漠然と考えていたことがある。そんなことができるならそこの村長になりたいとも考えた。
そんな村が四国に現存していることを知ってびっくりした。というより、戦前にはそんな村をそこかしこのあったのだということを再認識させられたという方が正しい。
エネルギー自給の村は旧別子山村。市町村合併で現在は新居浜市の一部となっている。別子山は江戸時代から住友が銅山を経営していたところ。日本有数どころか世界的銅鉱山だった時期もある。廃鉱となってから30年以上がたつが、昭和34年、地元の森林組合が別子山発電所と小美野発電所を建設・経営し、村に電力を供給していた。別子山村では四国電力の送電線は一切なく、村独自の電力体系を持っていて、余った電力を四国電力に売っていたのだ。
筆者がエネルギー自給村をつくりたいと思ったのは、まさに別子山村のような村をつくりたかったからである。山村の資源は森林と観光しかないのではなく、水からエネルギーを生みだして、”商品”として販売することも可能なのだ。
賀川督明さんが関わっている「水の文化」28号に小林久茨城大学農学部准教授はこんなことを書いている。
「30戸規模の集落が発電機を入れて、自分たちの電力をまかなうケースを想定してみましょう。1軒の家庭が1年間で消費する電力は5000kwhぐらいです。ということは1軒につき1kwの発電設備でまかなえますから、30軒で30kwの発電機があればいいわけです。仮に1kw100万円として30世帯で3000万円集めて初期投資し、あとは維持管理のコストを見ておけば採算は取れます。こういう集落が増えたら、不足分が出たり余ったりしたときにお互い融通しあえばいい。小さな集落がお互いに融通し合うことで、自立していけることが私の描く農村の理想図です」
実は30kwの出力は軽自動車のエンジンでも優に出せるエネルギー量なのである。洗濯機や冷蔵庫の中古のモーターを水車で回したらどうなるか。モーターは発電機そのものであるから問題はない。
こんな発想で村を経営したらおもしろいのではないだろうか。村に鍛冶屋が復活して、童謡の「村の水車」のようなことになりはしないか。たぶん3000万円よりずっと安く村の発電所が実現しそうだ。
ずっと考えていたことが何か手に届くところにあるような気がしてきた。
2008年2月発行の『水の文化』(ミツカン水の文化センター)28号は「小電力の包蔵力(ポテンシャル)」がテーマ。小林久茨城大学農学部准教授が「エネルギー自立型から供給型へ」という論文で報告していた。