中国経済で今一番の話題はBYD。電気自動車メーカーとして頭角を現し昨年、アメリカのテスラを抜いたことが話題をさらった。2024年の販売台数は前年比41%増の427万台。ホンダやニッサンを抜いた。売上高は前年比29%増の7710億元(約15兆4200億円)で、純利益は34%増の402億元(約8000億円)、負債総額は285億元(5700億円)と絶好調とみられていた。しかし、年が明けると、香港の有力コンサルタント会社GMTがBYDが債務を隠していると公表、6月には、債務が3230億元(6兆4600億円)、隠れ債務を含めると真の債務は5500億元(11兆円)に達していると発表、市場に激震が走った。隠れ債務とは部品メーカーへの支払いだ。BYDはかねてより、サプライヤーへの支払いは9カ月から1年後。先進国ではあり得ない契約。この分を”負債”とすれば、債務が5500億元になる計算だ。BYDの純資産は1500億元(約3兆円)に満たないので、事実なら完全に債務超過状態だ。メディアは「第二の恒大になるのではないか」と真相解明に乗り出している。

 BYDは1990年代、バッテリーメーカーとしてスタート。2007年から電気自動車製造に乗り出し、中国政府の巨額の補助金にも支えられて、ここ10年で世界の自動車大手に成長した。中国政府はこの10年、電気自動車普及に1.6兆元(32兆円)もの補助金をつぎ込んだ。当初は1台100万円ほどの販売補助金だったから半端でない。数百万円の価格に対する補助金だから、国民はBYDに飛びついた。ヨーロッパへの輸出も始まり、昨年は月間1万台前後を売る実績を示した。

 2025年の販売目標は550万台(前年比41%増)だったが、1-4月の実績は138万台、前年実績に達しない月もあった。6月、BYDは突如、大幅値下げに踏み切った。35%、100万円以上値下げした車種もあった。当然、競争各社も値下げに追随せざるを得ず、中国の電気自動車業界は値下げ合戦の状態。一番の影響は、中国経済の減速だ。経済の減速は2023年から始まったとされる。ここ数カ月、公務員や大手企業の給与削減が厳しい。ネットでは、40%から60%の削減が普通。最近のネット情報で注目されているのは、中鉄上海が業績給を廃止したという噂である。中国の国鉄の一つでもある企業である。給与半額は鉄道会社ばかりでない。上海市職員や人民銀行、銀行証券監督委員会、証券監督委員会など金融関係機関にも広く及んでいるという。上海は中国で一番経済が発展している都市である。中国の給与はそもそも基本給が安い。その何倍もの業績給で生活が成り立っている。業績給がなくなると、手取りは確実に半分以下になる。マンションのローンを支払えない人も数多く出現している。中国の国民にとって、自動車の買い替えどころではない。ネットの「精鋭論壇」では、「BYDは明日、倒産しなくとも来年、再来年には確実に倒産する」と報じている。