生活保護費1日1000円の衝撃

「桐生市事件」という本を書いた小林美穂子さんと小松田健一さん。ユーチューブで実際起きた桐生市での生活保護が歪められた事件の話を聞いて驚いた。驚くより何も、これまで聞いてきた生活保護の話で自分自身も偏見を持っていたことに大いに反省させられた。
小林美穂子さんは、本のまえがきには「生活保護者が1日1000円しか渡されず、月3万円台で生活している人がいる」「生活保護になっているのに保護費を満額支給されず、割れた窓ガラスを段ボールでふさいで寒さに耐える人がいる」。反貧困ネットワークぐんまで生活困窮者の支援に奔走する仲道宗弘さんからそう聞いた時、あちこちの自治体で不適切な対応を見てきた私でも、まさかそんなことが? と、にわかに信じられなかった、と書いている。
読み進めていくうちに、保護費支給のために困窮する市民をハローワークに日参させ、1000円札を手渡しする実態だけでなく、窓口で罵声を浴びせかける水際作戦、捺印の捏造、福祉課への警察官OB配置など次々と暴挙が行われていたことが明らかになっていく。
桐生市事件は2023年11月21日の東京新聞社会面の記事から始まる。たった1年半前のことである。不思議なことに群馬県で桐生市と館林市だけがこの10年以上前から、生活保護世帯が激減している。
生活保護の目的は、もちろん自活できるまでの支援だが、病気や怪我、加齢によって就労が不可能な市民は確実に存在する。生活保護費の原資は国のお金。決して自治体の肚が痛むわけではないのに、なぜ窓口でこんなことが起きるのか。(萬晩報主宰 伴武澄)