菅野完「日本会議の研究」
菅野完(たもつ)「日本会議の研究」を読んだ。2016年に出て、30万冊うれた、その後、雨後の筍のように「日本会議本」出版が相次いだ。菅野は別のトークショウで「今回の兵庫県知事選で、日本会議とその周辺でうごめいていた一群の人々の名前が次々と出て来た」「斎藤文彦の再選について、一部で立花隆やSNS戦略などと言っているがそうではない」「従軍府はいなかった、南京虐殺はなかった、夫婦別姓反対、憲法改正などリベラルな人から見れば、おもしろくない言説は元をたどると日本会議やその周辺に端を発している」などと語っている。
では日本会議って何なのだろうか。ウィキペディアによると、1997年に設立し、2016年時点で、会員は約3万8,000名。全47都道府県に本部が、また241の市町村支部がある。会長はいない。事務総長は椛島有三氏。多くの宗教団体が加盟し、日本会議の主張を全国に広げているのが強み。1978年結成された「元号法制化実現国民会議」(椛島有三事務局長)が母体とされる。別動隊として、「日本会議国会議員懇談会」のほか、「日本会議地方議員連盟」、「皇室の伝統を守る国民の会」、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などがあるが、生長の家青年局を母体とした日本青年協議会という組織が仕切っているとされる。
第三次安倍内閣の閣僚19人ののうち、日本会議国会議員懇談会のメンバーが16人もいた。つまり日本会議に支配された内閣だった。安倍内閣を支える組織として、日本青年協議会、日本政策研究センター、谷口雅春先生を学ぶ会の三つがあるとされる。安倍内閣時代の自民党の憲法改正論議は、別動隊の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」とほぼ同一路線をたどっていたというから恐ろしい。
日本会議が目指すものは次の5項目である。
1.美しい伝統の国柄を明日の日本へ(皇室中心)
2.新しい時代にふさわしい新憲法を(改憲」
3.国の名誉と国民の命を守る政治を(靖国参拝)
4.日本の感性をはぐくむ教育の創造を(愛国教育)
5.国の安全を高め世界への平和貢献を(自衛隊海外派遣)
新しい教科書問題や夫婦別姓への反対を地方議会での請願活動などを中心に一定の成果をもたらしてきたがその中心メンバーは60年代後半の学園紛争で右派として活躍した安藤巌や椛島有三など生長の家を信奉する一群の人々なのである。生長の家は戦後、政治に進出して村上正邦らを誕生させたが、1973年、政治と決別、エコロジーを目指す宗教団体に変質しており、今では日本会議とは別物だが、生長の家原理主義者たちが「谷口雅春先生を学ぶ会」をつくって、極右の言論活動を続けている。菅野氏によれば、「どういうわけか、尼崎を含む昔の摂津国あたりに、一群の人々がいて、極右の言論や行動をとってきていて、その人たちが兵庫県知事選でうごめいていたはずだ。籠池泰典もその一人」と語る。