103万円の壁は本当か
「年収103万円の壁」是正やガソリン税の暫定税率廃止が来年度税制改正の議論になることが自公国で合意した。年収の壁を178万円にすると7兆円、ガソリン税の租税特別措置をなくすと1.7兆円が必要だとされ、財源問題も取りざたされているが、防衛費の2倍増に必要な予算があるならなんとでもなるはず。玉木代表のスローガンを手掛かりに国民を豊かにする政策を野党でまとめてほしい。
「年収103万円」は総選挙で国民民主党が掲げたスローガン「若者の手取りを増やす」の具体策だが、その後多くの識者から「103万円は単なる所得税の非課税枠でしかない。それを超えても減収になるわけではない。年収が1000万円、2000万円の人の方が得するだけ」という考えが示され、それよりも社会保障費を採られる106万円の壁の方が重要だということが分かって来た。
国民の所得が増えない中で確実に増税や社会保険料の負担が増えて来たことは確か。2012年6月、民主党政権の時代、野田首相は自公民三党で①消費税の段階的アップと②増税分を基礎年金に回す―合意をした。安倍政権は消費税の増税を二段階で行ったが、基礎年金を税金で賄うという改革に手を付けなかった。このことを忘れてはならない。さらに法人税を減税して企業の内部留保を増大させるなど国民から見れば、企業優遇策を重ねて来たのだ。
1980年代、松下幸之助が言っていた。「1億円の収入があっても9割も所得税を取られる」。かつての日本はそんな国だった。所得税の累進課税が過酷だった。9割というのはやりすぎの感があったが、今は最高税率45%でしかない。しかも富裕層の大半が株式の値上がり益や配当による収入が多く、源泉徴収で20%しか課税されていない。総合課税にすれば所得税の大幅増収が図れる。