政治とカネの問題
5年前、「伴たけずみを支える会」という政治団体を設立した。2019年4月の市議選挙に出るためであるが、普段の政治活動は後援会への加入以外、選挙に関連したことは一切禁止なのである。毎年、収支報告書を県選管に提出している。3月末に提出したのは2023年度分、選挙の準備もあったため、自分自身が約70万円寄付し、支出を賄った。寄付はゼロである。最大の支出は人件費2人分で40万円。後はチラシ、名刺印刷や看板製作費など政治活動費。1件当たり5万円以下のため領収書も不必要。その他支出で9万円をまとめて計上した。選挙の公示日以降の費用は別途、選挙運動資金報告書を提出した。1週間の費用は30万円程度である。つまり、事前運動を含めて100万円足らずで選挙を戦った勘定になる。明朗すぎるぐらい。市会議員レベルでは政治に金がかかるとはいえない。市議になってから報酬を毎月59万円いただいている。期末手当を含めて年間900万円の収入があった。そのほかに政務調査費が月10万円支給されるため、議員になれば1000万円の所得があるとされるが、政務調査費は使途が厳しく制限されていて、僕の場合、年間20万円ほどしか使わなかった。残りは「返納」を余儀なくされる。
しかし、世の中で政治と金の問題は一向に鎮まらない。ここ数年、自民党はパーティー券の裏金問題で大きく信頼を失った。日本では政治資金規正法により、政治活動に使うお金の出入りが厳しく取り締まれている。にもかかわらず、問題が起きるのは、この法律がざる法だからである。
国会議員になると政治家個人に歳費が支払われる。期末手当を含めて2000万円を超える。その他、公費として立法事務費が月65万円、調査研究広報滞在費が同100万円。これは市議の政務調査費にあたるが、高知市議会ほど使途が厳しくない。つまり計4000万円近くのお金が一人の議員に支払われる勘定。さらに公設秘書3人に43万円から64万円+期末手当や住宅費などが支給される。もちろん雇った場合である。広瀬議員は実体のない秘書を雇ったことにして、その費用をねこばばしていた。詐欺罪であるから、政治以前の話である。
政党には政党交付金が支給される。総額300億円。議員数に応じて支給されるから自民党には200億円近い金が流れる。政治家個人への企業献金は禁止されているものの、政党や政治団体はオーケー。企業献金は自民党を潤すだけでない。政党交付金を含めた巨額の資金がさらに有力議員に流れる。法律には「何人も候補者の政治活動に寄付してはならない」とあるが、「政党が政治活動のためであれば、その限りでない」との例外規定があるからである。有力議員となれば、億を超える資金が政党から流れる。4000万円にプラスということだ。政治活動に使うかぎり税金もかからない。
本来、政治資金は政治団体のみで扱うことになっている。政治資金規正法では①一定額以上の寄付の記載を義務付けている②政治家個人や政党団体への寄付を禁止している。にもかかわらず、政党と政党がつくる政治資金団体には企業献金が認められているのだ。政党もまた政治団体である。自民党の場合、国民政治協会という政治資金団体が受け皿になっていて、企業献金を受け入れている。政治資金団体から政党への寄付は許されているから、自民党は国民政治協会を通じて企業献金を受け入れていることになる。いわゆるトンネル団体というわけである。
同じく政治団体に資金管理団体という概念もある。これは国会議員が主宰するもので、企業献金は受けられないが、政党からの寄付は認められている。同じような範疇で、国会議員関係政治団体もある。さらにその他の政治団体もある。たくさんありすぎるので素人にはよく分からない。その他の政治団体は、献金する企業がつくるもにや自民党の派閥も含まれる。僕の政治団体もこれで、会計基準が一番緩い。国会議員の資金管理団体に入った資金はその他の政治団体に寄付されて自由に使われることになる。
「検証 政治とカネ」(上脇博之著)を読んだ。神戸大学の教授ながら、自民党や自民党議員の政治資金問題を取り上げて、何度も刑事告発をしてきた人物。この人なくして今回のパーティー券裏金問題は浮上しなかったかもしれないが、なんべん読んでも頭に入らない。