日銀は7月31日の政策決定会議で政策金利を0.25%へ引き上げると決めた。植田日銀総裁は「経済・物価の情勢が見通しに沿って動いていけば、弾き続けて金利を引き上げていく」と明言、市場では次は0.5%に引き上げるとの予想をしている。日銀の政策変更に為替市場は敏感に反応し、1ドル=154円だった円相場は一気に149円まで上昇した。一方で毎月6兆円の国債の買い上げていた政策は数年後に3兆円にまで減らすことを決めた。

大手メディアは一面トップで日銀の政策変更を報じたが、果して日本経済は金利ある世界に本格回帰するのか。それは大きな疑問がある。今回の政策変更の背景に財務省の圧力があったとされる。長引く円安によって消費者物価が高騰、賃金の大幅な上昇があっても実質的な購買力は向上しないことへの国民的不満を解消するのが目的だったと考える。日銀による国債買い上げを停止するというなら大きな政策変更といえようが、中央銀行による国債買い上げという「禁じ手」が続く限り、大幅な金利上昇は許さないだろう。金利上昇によって国債発行の金利も上昇したのでは日本の財政は持たないという旧来の考えがまだまだ政府内の主流なのだろう。

内閣府の試算では長期金利が2033年度に3.4%まで上がると、国債の利払い費は22.6兆円に膨らむ見通しだ。23年度の7.6兆円の3倍となるとしている。

金利上昇は果たしてそんな悲観的見通しばかりかといえば、そうでもない。例えば、金利が3%になれば、2000兆円ある国民に金融資産に60兆円という金利が生まれる。日本の金融資産の多くは高齢者が保有しており、消費拡大に大きな影響を与えるだろう。またその消費に消費税10%の恩恵が加わる。一方で60兆円金利には20%の税金がかかるから政府は12兆円の税収増となる。金利上昇によって財政が持たないというのは考え過ぎである。どんな経済政策にも作用と反作用がある。効果だけがあるはずがない。