地方都市に住んでいると、子どもの進学は財政的に大きな負担になっている。県内の公立大学だったら、50万円の学費を払って後はアルバイトしろといえるが、県内にはすべての進学希望者を受け入れるキャパはない。県外の私立大学に入学すれば、最低でも年間200万円の仕送りが必要になる。4年だと800万円である。もちろん税金を支払った後の収入から負担する。

東京や大阪、京都など大学が集積している大都市に対して、地方都市の人たちはおおまかにいって1兆円近くの仕送りをしていることになる。貧しい地方から豊かな大都市に「貢いでいる」のである。日本という国はそんな矛盾を抱えている。大学を卒業して地元に戻って活躍してくれるならまだその苦労は報いられるだろうが、「貢いだ」うえに「帰ってこない」。賃金が安い上に十分な就職先もないからだ。

僕が記者として若いころ勤務した大津市や高松市では、ほとんどの警察官や公務員が高卒だった。大卒でなくとも十二分に仕事をこなしていた。看護師も病院で見習いをしながら近くの看護学校に通っていた。人材が地元で循環していたのである。いつのころからか、採用基準の大部分が大卒になっている。もちろん高卒枠もないわけではないが、大部分が大卒なのである。

自分たちの学生時代を振り返っても、学業よりもサークル活動などで楽しく過ごす4年だったから、あまり強いことはいえないが、県外進学への地方に負担はあまりにも大きい。この際、県庁や市役所の採用基準を昔のように高卒にしたら、親御さんたちに負担は多いに軽減されるち思う。それだけでない。4年間、800万円のお金が地元での消費に回り、経済が活性化する。そんな効果も期待されるはずだ。