高知市は災害発生時に利用できる「マンホールトイレ」を2021年度から5年かけて学校など主要な避難所39カ所に設置している。高知市議会9月議会の勉強会があり、補正予算で整備費用を上乗せする考えを示した。地盤が設計時と異なり、工費が当初予算以上かかることが分かったためだ。数年前、城西中学校での避難訓練で見学したことがある。組み立て式トイレが避難グッズなどとともに埋め込まれていて、いざとなった時に組み立てる。一応プール水などを利用する水洗トイレだが、いってみれば、巨大なくみ取り式便所と考えたらいい。電気が止まれば、本当にそうなる。そもそもマンホールから下水道に流すという発想はほとんどない。日本の避難所運営マニュアルではまっさきに水洗トイレを使用禁止にすることになっているのだ。

その後、世界にはトイレカーというものが相当普及していることを知った。もちろん水洗式でシャワーを備えたものもある。移動式だから避難所にまっさきに届くことになっている。高知市で営々とつくっているのは、主に学校の校庭にあり、隣の建物が崩れ落ちたら使えなくなってしまいそうで気掛かり。費用は一か所2000万円から3000万円と決して安くない。たぶんトイレカーのコストとどっこいだと思う。

イタリアでは州ごとに災害オペレーションセンターがあって、コンテナ型のキッチンカー、シャワーカー、トイレカーが常備されている。たぶん日本では「災害時だからしょうがない」と不便を我慢しているが、快適なトイレ環境を整えることは、贅沢ではないはず。もちろん、高知市ではトイレカーも昨年から1台導入している。全国の約1,700市区町村が1台ずつトイレトレーラーを常備し,被害の大きい被災地に全国から速やかに集結できるような体制を目指すプロジェクトに参加していることは事実。しかし、多くのお金はマンホールトイレに費やされている。根本のところで発想が違うのではないかというのが僕の考えなのだ。