全国10電力のうち7社が今年6月からの電気料金の値上げを申請した。1996年、燃料価格の変動の対応して、基本料金の50%まで各社の判断で値上げできる「燃料費調整制度」が導入されているが、各社とも上限の50%に張り付いたことがその理由となっている。政府は1月から電気料金1Kw時あたり7円の補助を行うことを決めているが、7社は3、4割の値上げ申請をしている。経産省がどこまで値上げを求めるか注目されるが、政府の補助策は焼石の水となりそうだ。

日本の電力供給は民間企業によって行われているが、基本的に地域独占体制。ゆえに電気料金は認可制となっている。基本的に大口電力、家庭向けの電燈、そして大規模店舗向けの三段階となっている。大口電力は家庭向けの半額である。そもそも企業優位の料金体系なのだ。

四国電力の2022年度決算をみると、売上高は10%減の6400億円、純利益は62億円の赤字。前年は売上高7200億円に対して、純利益は8割減の30億円。6月に発表した2023年度の予想では売上高8550億円に対して純利益は250億円の赤字となっている。

しかし、第二四半期(4月―9月)は売上高48%増の4200億円、純利益は900%増の90億円を確保している。確かに原油価格は高止まりしており、円安も進んでいるが、赤字になったのはたった1年。配当も維持している。少なくとも2023年度の決算をみて、2年連続の赤字となるなら、いざ知らず、まだ今年度の決算は確定していない。どこに値上げをする理由があるのか。

一般の民間企業では原材料の高騰だけで値上げに踏み切ることはできない。まず競争他社の動向や値上げによる需要減も加味することが不可欠。赤字になるから値上げをするなどということはない。

電力各社はこれまで「護送船団」的経営を続けて来た。東京電力がまず判断し、弟分の関西電力が続き、そのほかが追随してきた。今回は順番が逆、四国電力は値上げ申請の先陣組だった。経産省が考える電気料金は電力会社の安定経営。つまりリストラなし、配当ありきなのだ。

昨年12月の消費者物価の上昇は10%。そもそも生活実感とはかけ離れている。賃金も上がらない中で、政府が考えなければならないのは国民のライフラインの確保であろう。電気料金の国民負担が3割も4割も上げたあげく、もし原油価格が安くなったらどう責任をとってくれるのだろうか。ウクライナ紛争が5年も10年も続くはずはない。いずれ世界の原油市場が落ち着く場面が来るはずだ。それまで電力各社はがまんの経営を続ければいい。