ロシアによるウクライナ侵攻から2カ月半が経過し、長期化の様相を示している。11日、ロシアが実効支配しているハリソン州の親ロ派幹部がロシアへの併合を要請し、新たな段階に入った。ルガンスク、ドネツク両州は2014年、すでに親ロ派が独立宣言しており、これにザポロージエ州が加わると、ロシアの実効支配地域はクリミアをつながり、ドニエプル流域から黒海に面する領域に拡大する。
 ルガンスク、ドネツク両人民共和国はノヴォロシア人民共和国連邦を標榜しており、ウクライナのドニエプロペトロフスク、ザポロージエ、ニコラーエフ、オデッサ、ハリコフ、ヘルソンの6州がこれに加わる予定であると表明している。また、隣国モルドバの独立主張地域である沿ドニエストル共和国や同国唯一の他民族居住地のガガウズ自治区も将来的に連邦に加入する構想を示している。実現すれば、人口を合計すると約2000万人に達する一大勢力圏が誕生する。ウクライナの面積の3分の1以上、人口も半分以上を占める。このうち、ハリコフは2014年に政府庁舎を占拠して人民共和国を宣言したが、まもなく鎮圧された。
 2014年の両人民共和国宣言をめぐる騒動で誕生したのはアゾフ大隊。当初は極右の義勇兵で構成されていたが、現在ではウクライナ国軍の国家親衛隊に編入されているという。過去にアメリカの対ウクライナ軍事援助に際にはアゾフ大隊への供与を禁止する条項が存在した時期もあり、日本の公安調査庁は『国際テロリズム要覧2021』において、極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながりの項目でアゾフ大隊について言及したが、侵攻後の今年4月8日。削除した経緯もある。鳩山由紀夫元首相がアゾフ大隊が親ロ派に弾圧を加えたと論評したこともあった。当時はなぜか分からなかった。単なる親衛隊ではなさそうだ。(萬晩報主宰 伴武澄)