なぜイスラエルがロシアvsウクライナの調停役?
「宮崎正弘の国際情勢解題」を転載させてもらう。
令和四年(2022) 3月7日(月曜日)通巻第7248号
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ゼエブ・エリケンって誰? プーチンと十年以上の親交のイスラエル大臣
なぜイスラエルがロシアvsウクライナの調停役として重視され始めたのか?
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ベネット(イスラエル首相)は、5日に特別機でテルアビブを出発し、トルコ上空を経由してモスクワへ着いた。ただちにクレムリンでプーチン大統領と三時間におよぶ会談を行い、直前ならびに会談後の二回、ゼレンスキー大統領と電話をしている。
また出発前にドイツ、仏蘭西首脳とも電話会談をこなし、同日中にモスクワを離れてドイツへ向かった。ベルリンでシュルツ首相と会談するためである。
イスラエルに旅行した経験のある人は承知のことだが、ユダヤ人社会では土曜日は完全に休日である。原理主義は車も動かしてはならない。官庁街は火の消えたように静かになる。その土曜の早朝に、ベネット首相はエリケン大臣を伴って静かに出国した。
ここへ来て、プーチンが仲介役にイスラエルを選んだのは何故か?
キーパーソンはイスラエルの国会議員で建設大臣を兼ねるゼエブ・エリケンである。エリケンはウクライナのハリコフに生まれ、ハイコフ大学卒業。ウクライナ語、ヘブライ語はもちろんだが、流暢なロシア語を駆使する。当時、ウクライナはソ連の一員だった。
ネタニヤフ前首相のプーチンとの会談にも必ず同席し、通訳をこなしたため、プーチンとは顔見知りでもある。昨秋にもソチでプーチンと会談している。
エリケンはイスラエルに帰還後、政治家を目指して国会議員に当選した。当初、リクードに所属して幾つかの大臣をこなし、与党の重鎮だった。しかし前の選挙ではシャス、新希望の党へと移り、現在は新希望党主を兼ねる。エリケンは最大野党「リクード」との合併に動いており、ネタニヤフ不在の与党で合併後、次期首相を狙うとされる。
エリケンはクネセト(イスラエル国会)では外交委員会を率いてきた。ロシアとはイランとの核合意の折衝でも何度となく会合をもったベテランである。
マクロン仏大統領は何回か調停役を志願し、モスクワにも飛んだが、プーチンは信頼しておらず、また苦戦が伝わる五月のフランス大統領選挙を意識したパフォーマンスが全面に出過ぎて、廊下鳶におわった。
フランスでは保守政党がふたつ、鎬を削りつつ勢力を躍進させており、決選投票で保守が一本化すれば、マクロン再選は覚束ないのだ。
次にプーチンが信頼を賭けて和平交渉の仲介役を望んでいるとされるのがトルコのエルドアン大統領だ。ところが、エルドアンはEU諸国から嫌われているため、調停役にふさわしくないと考えられている。
そこで白羽の矢がイスラエルに飛んだのである。
もっともプーチン批判派のモスクワタイムズなどは、「危険なギャンブルだ」とシニカルにベネットのモスクワ訪問を評している。
共通項は何か。
ロシア経済はユダヤ人が国外に去ってからふるわなくなった。新興財閥の殆どはユダヤ人だった。ウクライナのゼレンスキー大統領もユダヤ人である。
ウクライナからユダヤ人が去って、経済繁栄に陰りが差し、オデッサのユダヤ人街は寂れた。残留していたユダヤ人も一万人がモルドバ経由でイスラエルへ向かった。
このルートから中国人、インド人も出国。とくに中国人3000人が現在まで国外へ出た。
アルジャジーラによれば、ロシア軍はオデッサ空爆を視野にいれているという。
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