政府は8日、新型コロナ感染拡大を受けた追加対策を閣議決定した。73兆円だが、国の予算は30兆円。10兆円規模といわれていた金額がいつの間にか3倍を超えていた。1998年3月「昨夜の10兆円が朝方12兆円、夕方に16兆円となった」というコラムを書いたことを思い出した。

https://www.yorozubp.com/9803/980326.htm

通常ならば「補正予算」とするべきところが「対策」になっていることに注目したい。1998年もそうだった。中身がほとんど詰まっていないからなのだ。

今回の対策は3回目である。一次補正予算は25兆円、二次補正は31兆円。そして今回は30兆円。一次の特徴は国民一人ずつ10万円を配ったことと、持続化給付金を盛り込んだこと。二次は家賃支援給付金に加えて「予備費」を10兆円も盛り込んだ。内容も規模が先にありきだった。今回の三次は地方創生臨時交付金1兆5000億円がコロナ対策。その他に国土強靭化と称した公共事業、脱酸素化に向けた環境基金などコロナと関係のない事業に巨額の対策費を盛り込んだ。

今回も規模ありきだった。コロナの影響で減少する国内需要の穴埋めが30兆円ということらしい。問題はたくさんある。まず「基金」が目立つ。年度を超えて使えるため使いやすいというのだが、その後の使途が分からなくなるのが特徴で、何に使われるか分かったものではない。これまでの基金は公務員の天下り先の給与に消えた疑いが免れない。

公共事業は「国土強靭化」をうたっているが、すでに3.11の東日本大震災時には20兆円という災害対策費が投入され、その後の風雨災害に際しても別途、対策費が計上されている。今更という感がある。この国の役人はどうしても公共事業がほしいのである。

環境対策ならば、太陽光パネルを各家の屋根に設置すればいい。1兆円あれば100万戸の屋根にパネルを無料で貼れる。15兆円ならば1500万戸である。日本国民は一気に自前の発電装置を手にすることになる。年間20万円から30万円の電気代は不要になり、他の消費に回る。これほど大きな景気対策はないと思う。その代わり電力会社は経営が破綻する可能性が大きいが大胆に実行するメリットは小さくない。

自動車のEV化に使ってもいい。同じく100万円の補助金を出せば、日本は一気にEV王国となり、生産面で世界のトップに躍り出ることは確実。15兆円あれば、1500万台。5年間の日本の国内販売に匹敵する金額だ。2050年を待たずに二酸化炭素ゼロの世界を達成できるというものだ。

日本に必要な発想は不要不急の公共事業ではないことを改めて強く主張したい。