11月7日、アメリカ大統領選で民主党のバイデン候補の当確が出た。ABCやCNNなど主要メディアが相次いで報じ、共和党に近いFOXまでも当確を打った。投票日から4日、緊張した日々が続いた。

僕は10月から自らの「はりまや橋夜学会」でアメリカ大統領選挙について議論した。「選挙人が分からない」「州によって制度がまちまち」「再集計は分かるが、集計を止めるなどあり得ない」。多くの意見が出た。

結論的にいえば、アメリカの選挙制度は200年以上も前につくられたもので、時代遅れではないかという意見が多かった。選挙人は「州の“賢者”たちに大統領選を委ねる」という制度。13州で選ばれた選挙人が当時の首都だったフィラデルフィアに集まってアメリカの代表者を選挙するという手法はテレビはおろか新聞ろくろくなかった時代にはなかなか考え抜かれた制度だったに違いない。

制度の中で奇天烈なのは、万が一、一部ので選挙人が確定せず、党派の選挙人数が過半数に到らなかった場合、1月に開催される下院で改めて投票することになっていることである。その際、下院議員全員に投票権があるのではなく、州1票でしかない。例えば、53議席あるカリフォルニア州ではすでに40人の下院議員が確定しているが、それが1票にしかならない。一方、1議席しかないアラスカでは共和党議員が勝利しているから、これも1票。州の人口によって票の重みが何十倍もあり、到底、「多数原理」が働くとは思えない。

今回の下院選でいえば、共和党が勝利した州は26あるから、下院投票でトランプ復活の可能性もあったのだ。

トランプが今回の訴訟作戦は、開票作業をストップさせて、1月まで州ごとの票を確定させない作戦である。これまで多くの州ではトランプの訴えが退けられている。これから連邦最高裁に順次、訴えるのだろうが、共和党系の裁判官が多いからといって、理由もなくトランプの訴えが受け入れられるとは考えられない。

頼みの最高裁でも訴えを退けられた場合、トランプがすんなり「結果」を受け入れるかどうか。判断が分かれるところであろうが、トランプにとってどこかの時点で「名誉ある撤退」が不可欠になるはずである。

最大の問題は、トランプを支持した7000万の人々である。恐ろしい事態が発生するのはこれらの一部でもが選挙結果を受け入れない行動をとった時であろう。世界はそんなアメリカを見たいとは思っていない。