明日、石を売ってみや

明日15日は今年初めての金曜市露店。シイタケは終わりだし、さて何を売るか、年明けから考えてきたが、妙案などあるはずもない。

悩み抜いていた今朝、山の仙人から携帯がなり、「今日は来るがかよ」と問われた。「はい、昼飯を食ってから行きます」と答えたものの、悩みが解決したわけではない。鏡村に入って、いつものようにクレソンを取った。

「あっそうだ」と気付いたのは、セリが生え始めていることだった。ついでにセリも収穫した。帰りに川縁でフキノトウを探した。「ない、まだ季節でないんだ」。そう納得していたところ、また仙人から携帯がなった。
「どこにいるぜよ」
「川縁でフキノトウを探しゆうところです」
「今行くから待っとちょりや」。

やがて仙人が現れて「ホウレンソウを取っていきや」「えっ、ホウレンソウを売るがですか」「そうや」。仙人の畑に連れられて、しばしホウレンソウ取りに熱中した。
「土がついちゅうきに、例のところで洗ろうていきや」
「はい」
「それでフキノトウは取れたかや」
「いや10個ぐらいしか」
「ちょっとシモの方へ行ってみよか」
「シモってどこですね」
「だから下流の方よ。後からついてきや」
仙人の四輪駆動軽四トラックについて行くと、仙人は急に右に折れて、川に下って橋のたもとで急停車した。にやにや笑いながら「橋の下を見てみいや」。
おー、フキノトウが川沿いに可愛い芽をたくさん広げている。
「感謝、感謝、こればぁあれば、明日の露店で自慢できる」
と仙人にお礼を言った。

だが、仙人は上の空。川縁で赤ん坊の頭ほどの石を拾い籠に入れ始めた。
「きれいやろ、明日、石を売ってみや」
「えー、石を売るの」
いくら鏡村のただのものを売って商売をしているとはいえ、石まで売るという発想はなかった。
「ほら、ただの石にも価値があろう。自分で値をつけてみいや」
鏡村の仙人にはいつも教えられることばかりだが、露店で鏡村の石を売るかどうか、まだ決断ができていない。

伴武澄 について

新聞記者を定年退職後、高知市へ帰り、旧鏡村でシイタケとクレソンを栽培しながら、はりまや橋商店街で毎週金曜日に露天を商い、その夜に「夜学会」を開催するスーパーおじいさん。
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