お酢のミツカンの広報誌として最近とみに注目を集めているのが「水の文化」。最新号は「小水力の底力」がテーマ。3.11以降、脱原発の対する国民的意識の高まりから、自然エネルギーが再評価されている。
 小水力はダムに依存しない小さな水力発電を随所に設けて、エネルギーの自給を図ろうとする試みである。昔の水車は臼を回したり、田圃への水利のためにあったが、ほとんどが電力やディーゼルに置き換わってしまっている。水の流れの高低差を利用すれば発電できることは小学生でも分かること。その小学生でも分かることをやっているところが各地にある。
 水の文化の編集部は今回、水が豊富な高知県を今回の取材対象にした。高知県小水力発電協議会の事務局長の古谷桂信さんが、県内を案内しながら、その可能性を探った。NHKの高知放送局でも同じような趣旨の報道特集を放映したから、梼原町の経験をテレビで見た人も少なくないと思う。
 筆者も安芸市の農業用水路のドンドと香南市の兼山水路の取材に同行させてもらった。農業用水は水利権が土地改良区に属しているため、発電設備の設置にややこしい手続きがいらない。一般河川であると国や自治体が管理しているからとてもめんどうなことになる。古谷さんの説明では、一般的に段差が1メートルあって水量が毎秒1トンあれば、7kwの発電が可能。つまり普通の家庭2軒分の電力がまかなえる。
 1トンは1立方メートルだから、大した量ではない。たとえば3メートルの段差の水路で毎秒3トンあれば、63kwで18軒分。小さな集落ならそれだけでエネルギーの自給が可能となる計算だ。1000人規模の村であれば、15カ所つくれば、村全体でエネルギーが自給できる。小さな村であればあるほど、エネルギー自給が容易であることが分かる。
 国や県にやさせれば、フィージビリティー・スタディだとかいって調査会社に膨大なお金をかけることになり、コストが合わないという結論が出ることは目に見えている。要は地元の創意工夫で何とでもなる。こんな話を聞いたこともある。
 発電機は一つひとつが特注のものだから小さなものでも数千万とかするが、逆転の発想で汎用のモーターを使えば多少効率が落ちてもその10分の1のコストで購入することができるそうだ。水力を生み出す水車やプロペラは、村の鍛冶屋につくらせれば安くでできる。肝心なのは「やってみなはれ」の精神であるという。
 みなさん、どうお考えですか。

 水の文化 http://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no39.html