高知県西部の梼原町に1000年以上続くという津野山神楽が10月30日行われた。以前から一度見てみたいと思っていたのがようやく実現した。
 梼原町は竜馬脱藩の道があることから近年にわかに注目されている。またエネルギー自給を目指す特異な町としても知られる。太平洋岸の須崎市から約50キロ山に入る山間の町だが、どちらかといえば瀬戸内海の大洲市に近い。
 そんな山間の町で何回も御神楽が行われる。今回は町の北にある三島神社が会場。三島神社そのものが平安の初期にこの地に移ってきた津野経高によって伊予 国から勧請され、代々の神官によって継承されてきたのが津野山神楽。神社と一体となって歌い継がれ舞い継がれてきたといっていい。
 儀式は午後0時半に始った。神楽の物語は日本の神話に基づくもので、天岩戸から説き起こす。鬼が踊り、夜叉が舞う。リズムは太鼓と笛と鉦が繰り出す。想像以上にアップテンポで、阿波踊りに似た音律だ。どの舞も同じ音楽で、そのリズムと旋律が延々と続く。
 鬼が踊る「大蛮」では、ユーモラスな語りがあるだけでなく、乳児の息災を願い、赤ちゃんを鬼に抱いてもらう儀式がある。どの子も鬼が恐いのか泣きわめくが、大人たちは楽しそうに乳児の鳴き声に喚声を上げる。
 辺りが暗くなるまで太鼓とお囃子の音が鳴り響くが、本来、儀式は8時間以上も続くという。儀式は「宮入り」「幣舞」(へいまい)「手草」(たくさ)「天岩戸」「悪魔祓」「大蛮」「花米」「二天」「山探し」「弓舞い」「鬼神退治」「猿田彦」「長刀」「折敷」(おりしき)「妙見」「豊饒舞」「鯛つり」「四天」と続く。