高知工科大学に勤める姉から大豊町の村祭りへの誘いをもらった。「神輿の担ぎ手がいなくなって留学生に助っ人を求めてきている」というのだ。
 そもそも村祭りなどと縁のない生活を送ってきたから、二つ返事で行くことを約束した。会場の星神社をネットで検索すると大豊町の大田口から山に入ったと ころにあった。16日の日曜日、吉野川沿いの約束の場所に向かった。副町長が出迎えてくれて「その車では無理なので町の車に乗りましょう」と誘ってくれ た。
 くねくねと山道を登り、15分ほど走ると山肌に棚田を構えた村落が現れた。庵谷(いおのたに)だ。庵谷の氏神さまが星神社。星神社の由来と村人に聞いた が、よく分からない。大豊町に星神社と名のつく社が11カ所もあるというのだから、この町にとって「星」は特別の意味があるのかもしれない。
 神事は午前10時半からはじまった。留学生は20人以上が集まった。神輿の担ぎ手8人のうち、村人は1人だけ。残る7人は留学生。裃と烏帽子の装束を身 に着けて、それぞれに神々しい。神事ではみなが正座し、神妙に神主の祝詞に聞き入る。拍手(かしわで)も打つ。イスラムのスカーフをかぶった女性もいた。
 日本の神さまは八百万の神だから、宗教も分け隔てしない。山菜を中心とした炊き込みご飯と煮物の昼食は村の奥さんたちの手作り。肉が入っていないから、イスラムも問題ない。
 一行は昼食の後、村人が集まる御旅所(おたびしょ)まで約1キロの山道を往復し、わっしょい、わしょいの掛け声も高らかに滞りなく神事を終えた。留学生たちは「おもしろい」「楽しい」を連発、笑顔の秋の一日となった。
 翌日の高知新聞は夕刊の一面トップでこの行事を報じた。
「田舎の神祭もインターナショナルで―。神祭でみこしや太鼓を担いで練り歩く「おなばれ」が16日、長岡郡大豊町の庵谷(いおのたに)集落で営まれ、7カ 国18人の留学生が担ぎ役などに参加した。過疎・高齢化で人出不足に悩む集落が、今年初めて県内留学生を募集。国際色豊かな一行が山里をにぎわした。」
 この行事は2011年度高知地域留学生交流推進会議地域交流事業の一環として行われた。日本人でもなかなか体験することができないような村祭りを多くの 留学生が体験できた意義は大きい。それにしても担ぎ手がいない神輿は全国に多々ありそう。軽トラックに神輿を乗せて村中を回るなどということは当たり前に なっているというのだから驚く。村人にとって秋祭りは豊作を神さまに感謝する大切な年間行事なのに・・・・・・。