日産自動車のタイ製マーチが7月13日、日本上陸した。80年代以降、アパレル、家電、パソコンとアジアからの製品輸入が続いてきたが、ついに自動車まで メイド・イン・アジアの時代が到来した。これまで日本人は自動車に対する独特のこだわりから、日本市場は国産自動車の牙城だった。20年ほど前、メルセデ スやBMWでさえ、輸入車を日本で”再組立”するといわれた。
 その日本市場に外国メーカーでなく、日産がとうとうアジア製マーチを国内市場に投入することになった。タイ製マーチの売りは100万円を切る販売価格。 軽自動車より安い価格帯を設けたことだ。日本のカーオーナーたちの国産に対するこだわりがどの程度変化するかが注目点だ。大衆車ならタイ製で十分との評価 が得られれば、トヨタやホンダもアジア製自動車を日本市場に投入するだろう。
 日本のカーオーナーたちの意識の変化は大いに歓迎すべきことだが、一方で日本人の「こだわり」によって守られてきた日本の自動車市場が一気に国際化する可能性もあり、日本の雇用を守ってきた橋頭堡が崩れ雇用不安に拍車をかけることにもなる。
 アジア製自動車が日本の公道を走る日は、誰もが「いずれ来る道」であると想像していたはず。成熟国家として避けられる道はない。遅すぎたのかも知れな い。90年代に韓国の現代自動車が日本に進出して大いに期待されたが、結果は極度の販売不振で、数年前、ディーラー網を撤退させた経緯もある。
 AVの世界でも、薄型テレビで世界市場を席巻しているサムスンやLGの姿はどこの量販店に行っても見ることはできない。日本の消費者は相変わらずソニー やパナソニック、シャープが世界の最高水準を行っていると信じ込んでいる。日本人のアジア蔑視はとんでもないところまできている。
 日本経済が世界に取り残されて久しい。その背景にあるのは日本人の言いようのない「日本製へのこだわり」がもたらした結果だと考えている。ジャパン・ア ズ・ナンバーワンは20年以上も前の評価であることを忘れてはならない。日産のタイ製マーチが日本人のそんなこだわりに一撃をあたえてくれることを期待し たい。(伴 武澄)