2010年6月14日、産経新聞朝刊1面トップに「全国郵便局長側 国民新に8億円」の見出しが躍った。筆者は小泉純一郎内閣が郵政民営化を果たしたときに拍手を送った国民の一人である。郵便局が公営であることに反対しているのではない。まず郵便貯金が国民の何の了解もなく、そのまま財政投融資の財源となっていることに危機感があった。次いで問題としたかったのは日本道路公団と同様にグループ企業による随意契約によって郵貯資金が郵政OBらに還流している点だった。もう一つ、公務員であるはずの郵政局長らが別組織をつくって堂々と政治活動をしている実態についてどうしても合点がいかなかった。
 国民新党は郵政民営化の是非を問うた2005年の総選挙で自民党から離脱して創設された政党だが、現在衆院3人、参院6人、計9人しか国会銀のいない小世帯。そこに郵便局長らがつくる政治団体「郵政政策研究会」などが3年間に8億円もの資金を流していたというのだから尋常でない。
 よほどの利益還流が約束されないかぎり、そんな小政党に巨額の政治資金を供与するはずがない。「民営化によって地域の郵便局が相次いで廃局になっている」などという話に誘導されてはならない。国営だった時代でも郵便局の新設・廃止は日常茶飯事だったのである。(伴 武澄)
 ————————-以下は産経新聞記事—————————–
 郵政改革法案の可決を目指す国民新党側に、全国の郵便局長らが過去3年間で総額8億1973万円を資金提供していたことが13日、産経新聞の調べで分かった。「全国郵便局長会」(旧「全国特定郵便局長会」)の会員やOB、家族らでつくる政治団体「郵政政策研究会」がパーティー券購入や寄付を行い、郵便局長らは国民新党の職域支部「国民新党憲友会」にも納金していた。国会議員9人の小政党に特定の団体側から8億円もの資金が流れていた事実に、識者からは「露骨な利益誘導」とする批判の声も出ている。(調査報道班) 国民新党は郵政解散直後の平成17年8月に設立。18〜20年の政治資金収支報告書によると、郵政研はこの間、全国の郵便局長らから個人献金計約7億5738万円を受領。党の衆参両院議員の現職や元職、候補者ら計12人の政治団体にパーティー券購入や寄付で、計2億5500万円を支出した。
 国民新党への寄付と、国民新党側が年1回開催する政治資金パーティー「国民新党総決起大会」でも、郵政研は計2350万円を支出しており、国民新党側への支出は3年間で総額2億7850万円に上る。
 国民新党側は、全国に12ある郵政研の地方組織「郵政研地方本部」からも3年間で計5750万円を受領した。
 また国民新党の職域支部「国民新党憲友会」は、郵便局長やOB、家族ら約21万3900人が党員登録し、3年間に党費として約6億1559万円、個人献金として9992万円を集めていた。このうち2億3178万円は郵政研側に環流。憲友会の代表は、日本郵政を監督する総務省の長谷川憲正政務官が務める。
 巨額の資金に基づく利益誘導の有無について、国民新党と郵政研はともに「まったくない。法的にも問題はない」としている。
 独協大法科大学院の右崎正博教授(憲法学)の話「特定の勢力から巨額の資金提供を受け、その勢力の望む政策を実行するのは、露骨な利益誘導といわざるを得ない。小政党の国民新党は、大政党と比べて資金量も大きく劣ることから、郵便局長会側の資金への依存度は相対的に高く、より露骨だ。郵便局長が中心となった職域団体の代表が総務政務官というのも、公平性に疑問がある」