どうも腹の虫が収まらない。いよいよ今日、政府・与党はガソリン税の暫定税率維持を盛り込んだ税制改正法案を再議決する。
 新聞などによると石油大手は5月1日から卸価格を30円前後引き上げると発表した。
 ちょっと待て。値下げならともかく「増税」である。周知期間がまったくないまま翌日から増税などあっていいのだろうか。もはやこれは法治国家ではない。
 税制改正法案が3月末までに国会を通過していれば、暫定税率の期間延長で国民にとって何も変わらないのだが、暫定措置がいったん切れた後はたった一カ月とはいえ法的にはガソリン税は本則に戻ったと考えるべきなのだ。
 元に戻す再値上げであってもこれは新たな「増税」なのだ。新たに「暫定措置」として5月1日から税の上乗せが発生する。しかも今回の租税特別措置法は 「当然の間」と言いながら「10年」の長きにわたる「恒久的増税」となる。いままでの2、3年の延長ではない。当然、周知期間を設けるべきなのだ。
 もっとひどいのは石油元売りである。
 共同通信の記事によると、出光興産は今回「1リットル当たり32円10銭引き上げると発表。暫定税率分に加え、原油価格高騰を受けた調達コスト上昇などによる卸価格引き上げ幅を7円とした」。
 4月29日 ガソリン160円突破へ 5月、小売価格が最高値に 【共同通信】
 だが1カ月前の記事では「出荷場所により価格差が出ないように、油槽所の在庫と、4月以降、製油所から出荷するガソリンの税額を合算し、値下げ幅を計算する。4月の卸値は22-23円の引き下げになる」と言っていたのだ。
 3月31日 ガソリン卸値22-23円下げ 出光興産など3社 【共同通信】
 ガソリン税の暫定措置が切れて4月1日からガソリン価格は25円下がることになった。それに対して元売はガソリンの卸値は22-23円しか下げないと言っていた。暫定措置の延長が復活すると元売りは卸値を5月1日から30円アップすると発表している。
 おかしくはないか。
 ガソリン価格の市中価格は競争だから、個別にどれだけ下がって、今回どれだけ上がるのか調べるのは難しい。しかし。石油元売りは数が多くない上、横並びだから分かりやすい。
 この1カ月に原油が上がったのは確かだが、下げるべきときは原油高騰を理由に税金分の値下げをせず、上げるときは税金分に2割も上乗せするとはふとときである。
 数日前から、「5月1日からスタンド30円値上げ説」が流布されていた。実際に店頭でどういう価格が提示されるか分からない。たぶん価格の転嫁は難しいのだろうと思う。
 4月1日の値下げ時に「初日からの値下げは難しい」と言っていたスタンドが少なからずあったが、今回の値上げ時には「初日から値上げ」を宣言しているスタンドがけっこうあるのだから笑ってしまう。
 石油元売りも元売りであるが、スタンド側もスタンド側である。
 それにしてもこの間、メディアは業者の言い分ばかりを記事にし、地方の声と称して自治体よりの主張ばかりを書いてきたのではないか。「混乱」だけを助長して、本気でガソリン税問題の本質に迫ろうとする気概すら感じられなかった。無念である。