安倍首相が突然辞意を表明したのが12日。政治的関心でいえば、自民党総裁選はあっという間に福田さんに傾いた。東京で見るかぎり昨日まで「後継は麻生氏軸」とかいった13日の見出しが「福田」一色に変わるのに24時間を要しなかった。すでに現場記者ではないので、取材する時間もないため、もどかしい。
 高知新聞のコラム「小社会」の表現を借りれば次のようになる。
「現代の一夜城が現れたのが福田さん、麻生さんの一騎打ちとなった自民党総裁選。福田さんが出馬に意欲を示すやいなや、それこそ一夜にして城主に迎え入れる城ができた。材料は派閥という、いささか古ぼけた板。九枚の板のうち八枚もが集まり、福田さんは余裕たっぷりに入城した。」
 国会議員間での支持では圧倒的に福田さんが強かった。152票しかない地方票など風前のともし火だ思った。ところが、土曜日も出勤して入力したが、オヤッと気づいた。
 麻生さんの地元の福岡県では県連執行部内で予備選を実施するべきか議論が二つに分かれた。いったん麻生支持で固まったかのように見えた。さすがに地元だと思ったが、古賀・山崎両氏の巻き返しで党員による予備選をやることに傾いたという。(その後再び予備選はやらないことになった)
 地方紙の記事を読んでいくと地方では必ずしも「福田一辺倒でない」ことが分かった。広島では「両氏は拮抗」、富山県の県議も「支持でも拮抗」、茨城県では「麻生支持に3票」なのだ。

街の声は福田・麻生氏拮抗【中国新聞】
福田・麻生氏がきっ抗 総裁選で県議支持動向【北日本新聞】
自民党県連代表3人決定 麻生氏支持の方向【茨城新聞】
「地方票意味ない」 自民党総裁選で自民県連【長崎新聞】

 週末の福田・麻生の各地での遊説のテレビを見ていて、レベルが高いとはいわないが、訴える力は麻生さんが福田さんを圧倒しているなと思った。たぶん街頭演説を聴いていた市民も同じ感想を抱いたのではないだろうか。われわれは小泉前首相のおかげで「政治家は訴える力が大切」ということを学んでしまっている。
 総裁選は23日に決着するが、万が一にも地方の票で麻生さんが過半数をとったら、どうなるのだろう。これは国会議員といえども無視しえなくなるのではないか。戦う前に勝負が決着していたのでは観客としておもしろくない。ここはぜひとも地方での予備選に期待を寄せたい。(紫竹庵人)