2007年08月07日(火)萬晩報通信員 成田 好三
 日本国民は、何とも恐るべき「危険人物」を国家の最高責任者に選んでしまったようです。何とも恐るべき人物とは、安倍晋三首相のことです。内閣総理大臣を「危険人物」と評することには、筆者も躊躇しました。
 だがしかしです。筆者はやはり、時の総理大臣を「危険人物」と評価せざるを得ないと考えます。その根拠になったのは、以下の短い記事です。
 記事は、安倍首相が率いた自民党が大敗した参院選投票日の3日後、安倍首相が全国の都道府県議会議長と懇談したという内容のものです。以下、見出しと記事を転載します。

 「地域間格差が敗因」全国議長懇談会、首相に不満相次ぐ(見出し)
 安倍首相は1日、首相官邸で全国の都道府県議会議長と懇談し、「地方の声にもしっかりと耳を傾けていかなければならない。地方の皆様が持っている漠然とした不安感にも、応えていかなければならない」として、地方対策を重視していく考えを示した。
 懇談会には奈良県を除く46都道府県の議長(代理含む)が出席した。各議長からは参院選の結果について、「選挙の結果は国民の声。地方の悲鳴は、中央で 考えられている以上だ。もっとしっかり、現実を直視して国民の声を聞いていただきたい」(愛媛県)、「47都道府県でそれぞれ格差が出ている。その格差が 選挙でも表れた」(高知県)など、地域間格差が与党の敗因とする意見が続出した。
 また、「一番関心があったのは政治とカネの問題。透明性を高めて、国民に納得を得られる施策の展開を」(東京都)という指摘もあった。
 一方、地方交付税の削減について、「地方交付税カットで大変な状況だ。農家への対策も必要」(香川県)、「地方交付税の財政調整機能が失われている。今の地方間格差は限界を超えている」(鳥取県)などの不満が示された。(読売新聞)

 ■「地方崩壊」の危機を理解できない首相
 この記事で筆者が注目したのは、記事冒頭にある安倍首相のあいさつ部分です。自民党の参院選大敗の要因には、年金問題、閣僚の事務所費など政治とカネの 問題、閣僚の失言問題もありますが、地方、特に過疎地を抱える地方が、安倍政権にと自民党に異議を唱えたということがあります。
 選挙区選挙のうち、1人区で自民党が6勝23敗という、前代未聞の大敗北を喫したことは、地方の「ノー」という答えだということができます。
 参院選敗北の3日後、安倍首相は地方議員のトップである全国の都道府県議会議長を前にして、こうあいさつしました。「地方の声にもしっかりと耳を傾けていかなければならない。地方の皆様が持っている漠然とした不安感にも、応えていかなければならない」。
 地方に「ノー」を突きつけられて、参院選で大敗北を喫した首相、政党党首の言葉とは、到底思えない言葉です。安倍首相は、地方がいま置かれている現実を何ひとつとして理解していません。
 そうでなければ、「地方の皆様が持っている漠然とした不安感」などという言葉は、口が裂けても言うことはできないはずです。地方が置かれている現実は、「漠然とした不安感」などと甘ったるい表現で済ませることができるものでは、けしてありません。
 地方が置かれている現実は、「地方崩壊」の危機です。このまま東京一極集中が進行すれば、地方は経済的にも、財政的にも、そしてコミュニティーとして崩壊してしまうという、極度の危機です。
 地方が置かれている現実は、人口流出と経済縮小、コミュニティー崩壊の危機です。そうした地方の現実をまったく理解しない、あるいはまったく理解できな い人物が、内閣総理大臣という、日本の最高権力者の座にある危険性は、他の危険性とは比べようもないものでしょう。(2007年8月4日記)