友人のフリージャーナリストの宮本惇夫氏から近著である『シャープ 独創の秘密』(実業之日本社)が送られてきた。自慢めいた話になるが、2年ほど前の正月、シャープの三重県亀山市での出来事、つまり液晶事業の急拡大を予想し、「ちまたでは液晶テレビのことを亀山のテレビ」と言い出していることを伝えた。宮本氏が以前、シャープに関する本を書いていたことを思い出して「もう一冊書くべきだ」と薦めた。
 シャープは元々、早川電機といっていたが、その前身は「シャープペンシル」の発明者。家電製造に移行してからは関西家電の御三家の一角を占めていた。とはいうもののガリバー松下、そして三洋電機に次ぐ三番手に甘んじていた。売り上げこそは松下には及ばないものの、液晶事業を中核に「オンリーワン」経営を引っさげた利益率ダントツの企業に成長した。宮本氏の本によれば「世の中にないモノをつくり出す”秘伝のタレ”経営にみそがあるのだそうだ。
 巻末の町田勝彦会長が対談で、太陽電池の発電コストが「3年後には家庭用電力並み」になるとの自信を示していた。新聞記事ではまだ公表されていないすごい見通しだと思うので紹介したい。
「液晶の次は太陽電池と位置づけています。地球に降り注ぐたった一時間の太陽光をエネルギーに変換したとすると、地球上の人間が一年間に使うエネルギーをすべて賄うことができます。こんな有望なエネルギーは他にありません。現在、太陽光発電のコストは家庭用電力の約2倍と少し高いのが課題ですが、これも 2010年には家庭用電力料金並みの1kw時あたり23円、2020年には業務用電力料金並みの14円、2030年には火力電力並みの7円ぐらいになるのではとみています。すでに当社だけではなく、業界全体でこの目標に向けて動き出していますので、太陽電池は、今後たいへん大きな産業に成長するのではと期待しています。そうまると「世界中のビルのカーテンウォールをすべて太陽電池に置き換える」という私の夢も実現できるのではないでしょうか。」 (紫竹庵人)