執筆者:兵頭 ニーナ【ギターボーカリスト】

今日は1週間程前に申請したビザ延長の許可がおりる日。レラに付き添ってもらって車で外務省に向かった。地図ではさほど遠く見えななかったが、道路が広い割には一方通行が多いので、ぐるぐる回り道してタツミンダホテル1階にある外務省に着いた。中に入ると正面は横に長~いカウンターになっていて、ほとんどの人が一番奥の窓口に向かってどどどっと詰めかけていた。並ぶということを知らないみたいだ。

そうなるとなるべく人をかき分け、前に進み大きな声で受付嬢の視線をこちらに向かせさっさと用件を伝えてしまったほうが勝ち!と言った具合だ。何しろレラは178センチという長身に中ヒールを履いてるから迫力抜群。私の手を引いてたったと前に進んでも誰も文句を言わない。

不思議だ。日本だったら回りから非難を浴びてとてもこんなことは出来ないだろう。

カウンターで名前を告げて待っても書類をはなかなか出てこない。レラが「もう書類はとっくに出来てるでしょう。忙しいんだから早くして!」と何度も大きな声で請求するので、私の方が少し恥ずかしくなった。

やっとのことで小さな紙きれ2枚を受け取ったが、今度はグルジア銀行に行って支払いが必要なのだと言う。エムザリの車に戻り、少しばかり坂道を降りていく。

銀行でも人がいっぱいだった。さすがにここではセキュリティーがうるさく、お行儀良く長い行列が出来ていた。30分ほど待って、小さな部屋に入りコンピューターのキーをたたいている若い女性に先ほどの紙を渡したら、愛想も無く「これでは駄目だ」と突っ返してきた。

レラはかんかんに怒ってグルジア語でまくしたてたが、一向に埒があかない。すったもんだの末「もう一度外務省に行ってくるから!」と私を椅子に座らせ、レラが飛び出て行った。

彼女のがつがつと床に響く靴の音が怒りをあらわにしていた。

することも無く、ふと目の前のコンピューターを見ると富士通と書いてあってほうっと思った。この部屋では手続きを終え支払いを済ませて外に出て行った人数分、次の人が入ってくるシステムになってるらしいが、そのうち一人出ると2人3人と入り込み6畳くらいの部屋がたちまちいっぱいになった。

気が付いたコンピューター嬢が一人づつですからね(たぶん??)と言ってにらみつけるがさっぱり効果がない。たまりかねてドアのところに行って数人追い出した。しばらくするとまた同じことになる。ほとんど幼稚園生を見てるようで可笑しくて笑いそうになった。

やっとのことでレラが戻って来て、列を外してかっかと歩いてきた。何人かの人が文句を言ってるらしいが、「うるさい!」と大きな声でどやしつけ中に入ってきた。30ドル払って領収書をもらい、再び外務省に戻りようやくパスポートを受け取ることができた。

やれやれである。レラには本当に有難う。しかし何ともめんどうなシステムに腹がたつ。独立はしたもののまだまだソヴィエト時代の体制が残っているようだ。若いサーカシュヴェリ大統領はアメリカで勉強したと聞くが、ここ数年の間にロシア兵が撤退、アメリカ兵と入れ替わるらしい。できれば最新のアメリカの各システムも出来うる限り早く導入してごく普通のライフラインを確立、国民のストレスを無くして欲しい。

当たり前のようにお知らせも無く、半日水も無く電気も無い生活というのはどうにもがまんならない。このグルジア一番の都会トビリシにあってこれだから田舎のほうの不便さは想像にあまりある。国民は我慢強いのかあきらめてるのか。やっぱりあきらめのほうが多いんだろうね。

でもあきらめないで。私のグルジアがんばれ!
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