【ロンドン20日共同】第二次大戦中に英国の情報機関が、インドの民族運動指導者で対英独立闘争を率いたスバス・チャンドラ・ボース(1897‐1945年)の暗殺を計画していたことが、アイルランドの歴史学者の研究で分かった。英BBC放送などによると、オハルビン・ダブリン大教授が、昨年解禁された英公文書から突き止めた。同教授は「これまで考えられていたより英政府がボースの独立運動をずっと深刻に受け止めていたことを示している」と話している。
 オハルビン教授はこのほど、ボースの活動舞台だったインド東部コルカタ(旧カルカッタ)での講演で新史実を発表。それによると、独立機運が高まっていた41年初め、ボースは枢軸国に独立運動への支援を要請するためコルカタから姿を消した。
 英対外情報機関の特殊作戦委員会(SOE)が行方を捜し、枢軸国イタリアの公電を解読した結果、ボースがアフガニスタンのカブールに滞在中で、中東経由でドイツ訪問を計画していることが判明。SOEは同年3月、イスタンブールと海路に駐在する工作員に追跡と殺害を指示した。
 しかしボースが当時のソ連経由でドイツに行ったため計画は成功しなかった。
 ボースはベルリンでヒトラーとの会談を果たし、その後、43年には訪日、日本の支援を取り付け「インド国民軍」を率いて旧日本軍と共にインパール作戦に参加した。
 英の危険視裏付ける
 中村平治・東京外国語大名誉教授(インド近代史)の話 英政府がボースをかなり危険視していたことが読み取れ、暗殺計画の存在が発覚したことは興味深い。しかし、どこまで実現性のあった話なのか疑問も残る。インド独立運動の主役はガンジーらであり、ボスはあくまで脇役的存在。歴史に「もしも」の話を持ち込むのは禁物だが、るに仮に暗殺計画が実行されていたとしても、ガンジーらの存在や自律的な大衆運動もあり、民族運動や独立に影響を与えたとは考えにくい。