執筆者:萩原 俊郎【萬晩報通信員】

【9月11日AP電】ふたを開けてみれば、小泉自民の勝利だった。「やつ当たり解散」「自爆テロ解散」と言われ、調整型の政治家が主流のこの国では〝変人〟と評価される―いや、われわれ欧米人から見ればよくある政治家タイプなのだが―小泉首相の特異のキャラクターによる、見通しのない解散総選挙、という当初の評価だったが、後から考えればこれはかなり用意周到、確信犯的な行動だったに違いない。

日本人はどうしても永田町の「政局」を見たがるが、国の外から見れば今、日本は大きな選択の岐路に立たされていることが分かる。つまり米国に近い「小さな政府」、新自由主義を志向する政治を、小泉は本気で進めるつもりなのだろう。

一方で米国とは異なる選択、つまり、自由競争の中にも国民への防護ネット=福祉や社会保障、さらに産業の持続的発展のための環境保護などを取り入れた、社会民主主義政策がEUで伝統的に強いが、日本ではその声は小さい。日本の最大野党、民主党の若手は小泉以上に新自由主義的な主張が多いのだ。

不思議なことに日本は、EUのような社会民主主義的な政党が政権を取ったことがほとんどないにもかかわらず―「野合」と呼ばれた自社さ政権があるが、あれは例外―自民の代々の指導者が、選挙対策も兼ねて国の各地方、各産業、ありとあらゆる「有権者」に配慮しながら利益を再配分し、「護送船団方式」で企業を守り、世界でも稀有な、国民の大多数が「中流意識」を持つ国を築くに至った。

彼らは見方を変えれば立派な社会民主主義者だったのかもしれない。

世界でも稀有なこの国を築いた「保守本流」を自称する自民党の政治家たちは、表面は親米を装っているが、ぎりぎりのところでは抵抗を示す。とくに、今回の解散の原因となった郵政公社の300兆円超の財産を、彼らが気前よく米国の信託銀行や証券会社に公開する気はない。

小泉はそんな彼らを「抵抗勢力」と名付け、その「利権ぶり」を糾弾し、今まさに自民党から、さらに政界から追放するため解散に踏み切った。われわれ外国人記者は、これを小泉による「党内粛清解散」「政界浄化解散」と名付けたが、粛清と浄化がすべて完了し、古い政治家たちの屍が累々と横たわる中で、小泉の新自由主義に向けた改革は、永続的なものに変わる。

今回の小泉自民の勝利で、日本は本質的に変わるだろう。

【9月12日AP電】11日深夜、東京都内で爆発があったもよう。警視庁は米ニューヨークで同時多発テロが起きた「9・11」に備え、厳戒態勢を取っていたが、イラク派兵に踏み切った小泉首相に審判が下る総選挙の投開票日に重なり、中東のテロ集団にとっては国際的に注目を集める、またとない期日設定となった。一部で「自爆テロ解散」という〝不謹慎な〟命名もあったが、これからは自粛を余儀なくされるだろう…。

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※これはあくまでパスティッシュ(贋作)です。実在のAP通信社とはなんのかかわりもありません。あしからず。