執筆者:兵頭 ニーナ【ギターボーカリスト】

5月1日(日曜日)。今日はグルジア正教の復活祭だ。

敬虔な信者達は夕べの内に教会のミサに出かけ、夜12時のキリスト復活を伝える鐘の音が鳴り響くと同時に周りの人達とお祝いのキスを交わしたことだろう。グルジアでは赤く染めたゆで卵しか作らないけど、私が子供の頃はできるだけ多くの色の卵を作り、籠に入れたパスハ(復活祭用の特別のパン)のそばにきれいに並べ、一家そろって東京神田のニコライ堂に出かけたものだ。

ヴィクトリア家にはここから歩いて15分程の丘の上に住むネリコから復活祭パーティへの招待があった。「ニーナお願い! あなたの歌をプレゼントしたいの」とヴィカに言われて断る訳もない。

アパート玄関先の路上花屋でチューリップとカラーの花束を買い、ヴィカ、リューバ母さん、ナターシャ、私の4人で出かけた。ネリコの家に着くと「フリストス、ワスクレースィ!」「ワイーシナ、ワスクレースィ!」とキリスト復活のお祝いの言葉を交わし右、左、右と3回ほっぺたにキスをする。

部屋に入るとまぶしいほど真っ白なテーブルクロスの上にすでにたくさんのご馳走が並べてあり、ひとつに2本分ぐらい入りそうな赤と白の大きなワインデキャンタもおいてあった。ご馳走とワインの量からして10人ぐらいのお客様になるのだろうと想像したが、意外にも少し遅れてナターシャの幼馴染だという老人が一人来ただけだった。早速ワインで乾杯してご馳走を食べ始める。何かにつけて乾杯するから帰るまでに何十回となくクリスタルグラスのチーンといういい音が響いていた。