球界を閉鎖系から開放系へ(9)決め手は赤字補填能力
執筆者:成田 好三【萬版報通信員】
日本プロ野球組織(NPB)は、11月2日に開いた実行委員会とオーナー会議で、楽天の来季からのパ・リーグ加盟を全会一致で承認した。
毎日新聞によると、同じく新規参入を申請していたライブドアとの比較審査の結果、楽天の方が企業規模、財務体質などの点で球団の継続的な経営が期待できると判断した、という。
毎日の記事の中で、NPB・審査小委員会の瀬戸山隆三委員(ロッテ球団代表)は、パ球団の年間平均赤字額を約32億円としたうえで、「仮に40億円の赤字を想定した場合、(2社の経常利益に与える影響率が)決定的に違う」と説明した。
滝鼻貞雄オーナー会議議長(読売巨人軍)も、「長期間赤字が続くパ・リーグの現状を考え、球団を永続的、安定的に経営できる企業が望ましいと判断した。楽天の経営体力がライブドアより勝っていた」とコメントしている。
一見しただけでは、しごくもっともな、常識的な判断のようにも思える。しかし、ちょっと視点を変えて考えてみれば、これほどおかしな、理屈に合わない判断はほかにない。
新規参入球団を審査するためにNPBが設けた審査小委員会ほどおかしな委員会はない。委員構成の正当性、審査の公平性、透明性、いずれにも大きな疑問がある。ここでは多くは触れないが、1点だけ指摘しておく。
委員はセ・リーグ会長と巨人、西武、ロッテ、横浜各球団の球団代表(横浜は専務)で構成されているが、何故この4球団で構成したのか、NPBから何の説明もない。しかも、4球団のうち巨人、横浜両球団のオーナーはアマ選手への裏金問題で、西武球団のオーナーは株に関する虚偽記載問題で、それぞれオーナー職を辞任していいる。
プロ野球は、なかでも巨人戦の放映権をもたないパ・リーグとその所属球団は、経営体として破綻状態にある。だから、近鉄本社は近鉄球団の経営継続を断念して、オリックス球団との合併(吸収合併)の道を選択した。
1リーグ化、選手会のスト、2リーグの維持と右往左往したあげくにNPBは来季からの新球団参入容認へと方針を変えた。
新規参入を申請した楽天、ライブドアの2社は、破綻した球界と球団の経営システムを変革するとして、加盟を求めたはずである。親会社による赤字補填に頼らない、自立した球団経営が、「わが社なら、わが社のシステムならできる。そのシステムを球界全体に導入すれば、球界全体が自立した経営体になれる」として参入を求めたはずである。
しかし、参入球団を審査するNPBには、そうした新しいシステムを導入する考えなど毛頭なかった。彼らが参入球団に求めたのは、「われわれと同じシステム、親会社による赤字補填にあなた方は耐えられるのか。その意思はあるのか」ということだけである。
既に破綻した時代遅れのシステムにしがみつく側が、自らのシステムを変革するために参入球団を求めたのではない。古いシステムに『同化』できる球団を選択したのである。
この構図はほとんど漫画である。例えて言えばこうなる。「シャッター通り」と化した商店街が、空き店舗を埋めるに際して、新しい商店形態、経営システムをもつ商店を受け入れるのではなく、撤退した商店と同様の旧態依然とした形態とシステムを容認する商店を選択するということである。
こんな商店街が、近い将来に活気ある商店街に生まれ変わると予想する消費者など誰もいないだろう。(2004年11月3日記)
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