執筆者:成田 好三【萬版報通信員】

長嶋茂雄氏不在の「長嶋ジャパン」こと、野球の日本代表がアテネ五輪で惨敗した。決勝でキューバと戦う以前に準決勝で豪州に敗れ、銅メダルに終わった。

野球の日本代表は、野球大国・キューバを破っての優勝、金メダル獲得だけを「目標」に設定されたプロ集団である。銅メダルに終わった結果は、惨敗と評価せざるを得ない。

プロ野球12球団のスター選手を集めた、いわば野球版「ドリームチーム」が、米国のマイナーリーグ組を中心に編成された豪州に、予選リーグ、決勝トーナメントとも敗れたことは、プロ野球界にとって大失態と言える。

球団合併に伴う1リーグ化の是非をめぐって球界が混乱する中で、リーグ公式戦の最中に各球団の主力選手をアテネに送り込み、金メダルを獲得することで野球人気の回復を図ろうとした作戦は、完全に裏目にでた。

それにしても球界は相変わらずの無責任体制のままである。報知新聞によれば、五輪野球の開催期間中、球界の幹部は誰一人として視察にも来なかったという。

他の競技団体であれば、五輪など大きな国際大会で、事前に想定した目標が達成されなかった場合は、その責任を問い、敗因分析を行うのが当然である。責任の所在を明確にし、敗因を明らかにしなければ、次の目標を設定できないからである。

このことはスポーツに限ったことではない。政治や経済の分野でも同じことが言える。

しかし、球界からは今回の大失態の責任を問う声も、敗因を分析する動きもない。彼らは当事者能力を失った烏合の衆のようだ。球界再編、1リーグ化に関する混乱に右往左往しているだけである。

アテネに大量の取材陣を送り込み、金メダル確実とはやし立てて、自らの紙面や放送枠で五輪野球を大きく取り上げてきた新聞、テレビなどの主要メディアの対応もひどいものがある。

アテネの敗因分析をしないどころか、日本代表を「準決勝の敗戦にめげず、よくぞ銅メダルを取った」などと称賛するメディアまで現れる始末である。

日本のスポーツメディアは、よほどのお調子者かお馬鹿さんである。彼らは、アテネでの大失態の責任を問おうともしない。まっとうな敗因分析をしようともしない。これまで通り、球界のご機嫌を取っていれば、視聴率は稼げるし、新聞も売れると考えているようである。

もうそんな時代ではないことは、視聴者や読者の方がよく知っている。球界再編をめぐる混乱の過程で、球団やその親会社の経営に関する考え方が何ともいい加減で、時代遅れのものであることが明らかになってしまったからである。

メディアにしても、政治などの分野と同様に、読者や視聴者が最も知りたい重要情報は、「知っていても書かない」業界であることを自ら露呈してしまったからである。

メディアは、多くの球団で経営が不健全で前近代的なものであることを前々から知っていた。ドラフトをめぐって巨額の「裏金」が存在することも、よく承知していた。それでも彼らはなにも書かなかった。メディアは読者や視聴者の側ではなく、当事者(球界)の側についていたからである。(2004年8月30日記)

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