執筆者:斉藤 清【コナクリ通信員】

昨年以来、一般利用者へのサービスを停止していたイリジウム(Iridium)衛星が、この4月から、一般通話サービスを再開することになりました。

66個の低軌道通信衛星を使って、地球上のどこからでもどこへでも通信ができるシステム、として営業を開始したイリジウム衛星電話でしたが、顧客の獲得がうまくいかなかったという理由で経営困難となり、昨年、裁判所に会社の整理を申し立て、一般顧客へのサービスを停止した状態で買主を探していました(日本の出資・関連会社は、早々に会社を清算・消滅させています)。

投資総額はおよそ6,000億円といわれますが、これを、元パンナムの社長率いる投資グループが約30億円で買い取る契約が昨年末に成立し、一般顧客へのサービス再開の準備が進められていました。

イリジウム衛星通信網は、実際には米国防総省の地球規模での通信システムの一環として利用されているために、昨年の一時期、特に日本で意図的に(と思われる)流された衛星の廃棄計画は、あり得ないと信じられていました。今回の買収に際しては、米国防総省自身が声明を発表し、2年分の通話料前払い(現在使用中の2万台分)と、2007年までの支援を確約しています。システムの運用は、ボーイング社が担当することになっています。

競合するシステムには、Global StarとInmarsatがあります。しかし、GlobalStarは通信可能な範囲に大きな制限があり、地球上どこでも使えるものではありませんので、イリジウム衛星電話の一般サービス再開で、現在でも不安定な経営状況は、さらに悪化するものと思われます。

Inmarsatは、永年の安定した通信サービスで定評があるのですが、高軌道の静止衛星を使うために、端末の小型化(現在はノートパソコン程度にまでは小型化しています)とアンテナ設定の自由度に限界があり、「ケータイ」の感覚で使える状況にはありません。

それにひきかえIridiumは、現段階での端末は非常に不恰好で、アンテナのコネクターなどはいかにも軍用機仕様となっていますが、それでも一応「ケータイ」として使えます。よりスマートな端末が、8月には1,500ドル程度で供給されるとアナウンスされています。アフリカの内陸部などでは、重宝な通信端末となるはずです。

本稿は「Gold News from Guinea=金鉱山からのたより」からの転載です。イリジウムの復活は一部メディアで本日報道されていますが、戦乱のギニアのコナクリからめるまがを配信している斉藤さんの情報収集力には頭が下がります。こういうことを可能にしているのがネット社会の先進性であることはいうまでもありません。(萬晩報 伴 武澄)

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