執筆者:園田 義明【萬晩報通信員】

■AOLとの訣別

2000年1月31日付けコラム「ダボスで語られる世界大再編の第2幕?」で、AOLの社外取締役であったベルテルスマンのCEOトマス・ミッデルホフが、AOLタイム・ワーナー誕生により辞任を示唆していると書いた。事実彼はAOLを去ることになるが、1953年生まれの若きリーダーはその後とてつもないことをしでかすことになる。

■ビベンディ・ユニバーサル誕生

2000年6月20日、フランスの複合企業のビベンディと同社傘下の有料テレビ会社カナルプリュス、そしてユニバーサル映画などを持つカナダの醸造・娯楽企業シーグラムの三社の合併が合意したと発表された。ビベンディ側によるシーグラムの事実上の買収となり、買収総額は約340億ドル(約3兆6千億円)にのぼる。

ビベンディと言っても日本ではまだ馴染みのない名前かもしれないが、現在のフランスでは赤丸急上昇中の企業グループである。従業員は27万5千人、売上高は約410億ドルでこの企業を率いるジャン-マリー・メシエも若干44歳の若きエリートである。

シーグラムはまもなく大阪に完成するハリウッド映画大手ユニバーサル・スタジオズに加え、ユニバーサル・ミュージック、ポリグラムなど豊富な音楽コンテンツを持っている。ユニバーサル・スタジオズは90年に松下電器産業が買収したが、経営方針の違いから「シーバース・リーガル」で有名なシーグラムに売却されたという経緯がある。

今回のビベンディ・ユニバーサル誕生により米AOLタイム・ワーナー、日ソニー・ミュージックエンタテインメント、独ベルテルスマン、英EMIグループのわずか5社が、市場に出回っている楽曲の約9割を配給することになる。

■ビベンディ・ユニバーサルの取締役会

ビベンディ・ユニバーサルの取締役会には何かと話題の多いシーグラムのブロンフマンも副会長に就任するが、なんとここにトマス・ミッデルホフが社外取締役としてしっかりと名を列ねている。1999年よりビベンディの取締役に就任してきたが、シーグラム買収の動機がここにあるようだ。

実はネット事業でもビベンディは、AOLフランスの経営権を持つほか、ボーダフォンとの合弁会社によるポータル事業では「米ヤフーをしのぐものにする」(メシエ会長)と積極的に取り組んできた。そして遂に3月5日にはビベンディ・ユニバーサルは、AOLフランスの保有株をAOLタイム・ワーナーに7億ドルで売却することに原則合意する。

■ダボスで語られた新たなる再編

今年のダボス会議でも情報技術(IT)関連では、ゲイツマイクロソフト、クーグル・ヤフー会長と並んでトマス・ミッデルホフもジャン-マリー・メシエも昨年同様顔をそろえた。そして忘れてはならないのは今年も同席した出井伸之ソニー会長の存在である。出井会長は、エレクトロラックス、GMに続いて4月からはスイスに本社を構える食品、飲料で名高いネスレの社外取締役にも内定しており世界的トップエリートの階段を駆け昇っている。

ソニーの欧州本社ソニー・ヨーロッパ(ベルリン)は昨年11月にビベンディ傘下で、欧州最大の有料テレビサービス会社、仏カナルプリュスの子会社の株式3%を取得すると発表しており、今年2月にはビベンディ・ユニバーサルとソニーとの合弁会社「デュエット」の設立を発表した。

メシエ会長は仏経済紙トリビューヌで、「デュエット」によりインターネットでの音楽著作権を扱うことで「世界の音楽著作権の約半数を占めるようになるだろう」と述べている。

■ナップスター訴訟

3月5日サンフランシスコ連邦地方裁判所は、インターネット上で音楽無料交換サービスを展開する米ナップスターに対する仮命令を下した。この訴訟は1999年12月に、旧ユニバーサル・ミュージック、ソニー・ミュージック、旧ワーナー・ミュージック、EMIグループ、ベルテルスマン傘下のBMGなど世界の大手レコード各社が起こしたものである。

ここで気になるのはミッデルホフ率いるベルテルスマンの動きである。昨年11月にベルテルスマンはナップスターと戦略提携を交わし、共同で新しい会員制音楽サービスの開発に取り組むことを発表している。敵対関係から一転して戦略提携へ大きく転換するが、ここでもメシエ会長は、ナップスターの海賊版防止用の保護機能の有効性が立証されれば、ビベンディがソニー・ミュージック・グループと共同開発している「デュエット」サービスで、喜んで音楽のライセンスを提供する可能性があると述べたという。

従ってビベンディ・ユニバーサル、ベルテルスマン、ソニー・ミュージックエンタテインメントの日独仏のまたがる戦略的な提携も予測される。その鍵を握る人物はミッデルホフである。

■ビベンディの挑戦

時代の変化のスピードが加速していく中で、若い世代が世界を動かす時代になった。今夜はあまり深酒をせずに「ミネラルウォーター」にして企画書でも作ることにしよう。

そう「水」も重要である。ビベンディの母体は水道会社のジェネラル・デ・ゾー社であり、もともと水道事業をベースに環境関連や建設、エネルギー部門に多角化してきた。1999年12月にビベンディは、日本での電力自由化参入に向け丸紅と共同で丸紅ビベンディ・エンバイロメント株式会社を設立している。

そしてアメリカでは「水」を巡ってビベンディはエネルギーの巨人エンロンと真っ向勝負に挑んでいる。

「ダボスで語られる世界大再編の第2幕?」http://www.yorozubp.com/0001/000131.htm

園田さんにメールは yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp