執筆者:園田 義明【萬晩報通信員】

教育改革国民会議報告-教育を変える17の提案-より

http://www1.kantei.go.jp/jp/kyouiku/houkoku/1222report.html
◆奉仕活動を全員が行うようにする
今までの教育は要求することに主力を置いたものであった。しかしこれからは、与えられ、与えることの双方が、個人と社会の中で温かい潮流をつくることが望まれる。個人の自立と発見は、自然に自分の周囲にいる他者への献身や奉仕を可能にし、さらにはまだ会ったことのないもっと大勢の人の幸福を願う公的な視野にまで広がる方向性を持つ。思いやりの心を育てるためにも奉仕学習を進めることが必要である。

◆提言
(1)小・中学校では2週間、高校では1か月間、共同生活などによる奉仕活動を行う。その具体的な内容や実施方法については、子どもの成長段階などに応じて各学校の工夫によるものとする。

(2)奉仕活動の指導には、社会各分野の経験者、青少年活動指導者などの参加を求める。親や教師をはじめとする大人も様々な機会に奉仕活動の参加に努める。

(3)将来的には、満18歳後の青年が一定期間、環境の保全や農作業、高齢者介護など様々な分野において奉仕活動を行うことを検討する。学校、大学、企業、地域団体などが協力してその実現のために、速やかに社会的な仕組みをつくる。

■時間を預託する制度
戦後教育の抜本的な見直しを検討している森喜朗首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が昨年12月22日の提出した最終報告の一部である。森喜朗首相は2001年の年頭でも1月末からの次期通常国会を教育改革国会と位置付け、教育改革に具体的に着手する考えを明らかにした。

この「全員が行う奉仕活動」についてネット上でも活発な議論が行われている。

奉仕活動自体の必要性については、若干の温度差があるものの共通して理解されているようだ。問題は「義務化」をすべきかどうかだろう。本来、子供達に奉仕活動のきっかけを与えてあげることが大人の義務ではないかと思う。また大人自身も積極的に参加できる仕組みも合わせて考えないと意味がない。ここになにやら歪みのようなものが感じられる。私も含めて壊した本人達が率先して参加すべきであろう。

そこでここに提案したいことがある。奉仕時間を預託する制度である。

仮に高校二年生のA君が100時間の奉仕活動を行ったら、A君個人の「時間預託通帳」に100時間が預けられる。この100時間は、A君本人が歳をとったり、事故に合ったりして奉仕活動を受ける側になったとき、引き出して使うことができる。

また、預けた時間を、自分以外の人にも贈与できることも可能にする。贈られる対象は、家族に限定するなどの制限を設けることが望ましいが、贈与できることでその「温かい時間」が大人の世界にまで循環していくことになる。

例えば、A君はいつも可愛がってくれた田舎のおばあちゃんに30時間分をプレゼントすれば、おばあちゃんはその時間分の介護やお買い物代行のサービスを地元の子供達等から受けることができる。本当は本人がしてあげることが望ましいが、地方で離れて暮らすケースが多く、全国ネットの時間預託制度で補うことが可能になる。

この贈与について、弊害も考えられるため充分な議論が必要であるが、奉仕活動やボランティア活動の自発性を考える上で選択肢ともなりえることも合わせて検討する必要がある。

■世界に拡がるボランティア時間預託制度

コミュニティの崩壊や子供達の心の傷は日本だけの問題ではない。すでに同じような試みは世界的な規模で始まっている。アメリカでは1980年の初期にエドガー・カーン博士によって「タイムダラー」が考案され、現在、全米で約200のコミュニティーで実施されており、各種のNPOはもとより行政システムの中にも組み込まれている。

この動きは日本でも拡がりつつあり全国各地ですでに実施されている。発想としては日本古来から結(ゆい)・講・座などの現代版と見ることもできる。

運営は地方自治体や学校やNPOが中心となり地域性豊かな活動を行えばいい。森首相はITも大好きそうなので、この際一斉に電子マネーなどデジタル技術の活用も視野に入れるべきだろう。預託管理を電子上で行い、お年寄りのためにチケット制も同時に取り入れ 時間券として紙幣のように流通していけばいいのである。発行者として自分の名前が記載されたオリジナリティー豊かなチケットが登場してもいい。災害が発生した時には、全国各地から多種多様なチケットが届けられるだろう。また日本だけにとどまらず世界に対しても協力を呼びかければ海外に暮らす日本人も故郷の家族に贈ることができる。

活動内容もネット上でオープンに議論して決めていけばいい。ここでも交流が行われるはずだ。

決して利子は付けないほうがいい。またその人が生きているときだけ使うことができる「温かい時間」であるべきだろう。そして子供達がその命の泉となる。

【参考】
Time Dollar Institute http://www.timedollar.org/
NPO法人タイムダラー・ネットワーク・ジャパン http://www.timedollar.or.jp/
エコマネー・ネットワーク http://www.ecomoney.net/ecoHP/top.html

さわやか福祉財団 http://www.sawayakazaidan.or.jp/
ニッポン・アクティブライフ・クラブ http://www.os.xaxon.ne.jp/%7Enalc/
BGF国際環境保護会 http://www.bgfs.com/bgf/system.html

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