コメ流通でもらった数通のメール(HABResearch&BothersReport)
執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】
いまごろ農村では田植えのシーズンである。滋賀県など早いところでは田植えが終わっているが、鉄道沿線にみる田植えの風景はたとえ機械植えであっても日本人に季節を感じさせてくれる数少ないシーンだ。
2年前に書いた02月03日「偽りのリアリティー(1)コメ・ブレンド事件」(MSNニューズ&ジャーナルでは=「驚くべきコメ流通の実態・消費者だましのテクニック」)に対して最近いくつかのメールをいただいた。福島県の有名な「安積ライスファーマーユニオン」安藤代表は産直新聞に萬晩報を転載いただくとともに生産車としてもコメントを寄せている。いただいたメールを参考に日本のコメ問題について考えてもらえたらと思う。
●コメ流通に関する私見
はじめまして、私はごく小規模な米の産直をしている福島県の稲作農家です。インターネットを初めて、まだ一ヶ月ほどの初心者ですが、伴さんの「驚くべきコメ流通の・・・」を拝見して、本当に共感を覚えました。しかし、一方で私の見解と食い違う点も多少ありましたので、メールを出したいと思っていましたが、なかなか出せないでいました。今回、私の産直で毎月発行している産直新聞に、伴さんの記事を取り上げさせて頂きましたので、原文のままお送りいたします。目を通していただき、ご指導いただけたら幸いに存じます。
★消費者会員の皆様へ★
今年は立春(二月四日)を過ぎてから寒さが厳しくなってきたような気がしますが、ここ安積野では、相変わらず雪の少ない冬を過ごしています。強風が吹いても、雪がなければ地吹雪にはなりませんし、吹き溜まりも出来ませんので、気温が低くとも暖冬のように感じます。先日行われた集落の総会の時にも、こんな年は、種をまいてから大雪が降るのではないかなどと、心配する声も聞かれました。
私がインターネットを初めてみたということは、先月号で紹介しましたが、たまたま閲覧したWEB(ウェブ)ページに、米の流通に関するおもしろい記事が載っていましたので、転載してみたいと思います。私から見ると間違っていると思う点も多々ありますので、《》で私の意見を述べさせて頂くと共に、最後に、なぜそんなことになるのかをまとめてみたいと思います
◆驚くべきコメ流通の実態・消費者だましのテクニック◆
共同通信社経済部 B.T
新聞記者は多くの”うそ”をみてきた。正確にいえば「うそ」ではない。オランダのジャーナリストのファン・ウォルフレン流にいうと「偽りのリアリティー」に手を貸してきたともいえる。
1993年産米が不作で94年はコメ騒動に明け暮れた。まず輸入米と国産米のブレンドが問題になったことは記憶に新しいだろう。
筆者は94年から95年にかけて農水省担当だった。農水省担当になる前は、ふつうの人々と同様「そんなバカな」と考えた。しかし、ことの真相を知ると、なぜ農水省が簡単に輸入米のブレンド販売を強行したか分かった。
●業界の常識は消費者の非常識
この1年で分かったことは簡単である。コメの販売は「ブレンドする」という意味なのである。初めての人にはこの意味がぴんとこないかもしれない。
だが、農家も、集荷業者(農協)も、系統組織(県経済連)、卸売り業者、小売店。誰に聞いてもコメを混ぜている。コメ販売のノウハウを聞けば、誰もが「品質の違うコメをいかに混ぜて味を保ちながらコストを下げるかだ」と答えた。
コメの関係者は、輸入米が入ってきたときも同じことを考えた。タイ米が長粒米でジャポニカとはまったく異なるコメであることはどうでもいいことだった。
だから、農水省が穀物検定で一生懸命、等級を付けても、工業品のようにそのまま消費者の手元に届くわけではない。農家すべてが出荷前にブレンドするとは信じたくない。だが一般的なのだ。
《少なくとも私の地区では農家段階でブレンドが行われることはほとんどないと認識していますし、全国的にも農家段階でのブレンドはごく一部の地区や人たちと考えられます。》
集荷時には60Kg入りの袋に入れる。その袋に等級が刻印される。しかし、その袋は流通段階でただちに破かれ、第2段階のブレンドが行われる。今度はふつう高い方の等級が新たな袋に刻印される。小売りでは同じことが繰り返される。もはや農水省が決めたややこしい「類別区分」や「品質区分」などはまったく意味を持たなくなる。
《ただちに破かれ、第二段階のブレンドが行われるというと、一次集荷業者の農協で行われるような表現ですが、一次集荷業者の中でも少なくとも農協では、そんなことは行われていません。また、高い方の等級が新たな袋に刻印されるとありますが、食糧事務所の検査印は偽造しなければ押せません。印鑑証明が付いているわけでもないですので、一部の悪徳業者は偽造したり、前の袋に中身の違うものを入れ替えたりすることはあるようです(時々摘発されている)。》
秋田で直接、消費者にコメを販売している農家に取材したときは開いた口が塞がらなかった。「うちは良心的だから10%しか混ぜていない」と自慢したのだ。一番おいしい「あきたこまち」でも一番安い滋賀の「日本晴れ」が10%ブレンドされているのである。
《秋田のことは詳しくありませんが、滋賀の「日本晴れ」は、安い方のお米ですが、一番安いのは北海道の品種です。また、悪徳業者は輸入の短粒種も使っています。ちなみに、中米という屑米から選別されたお米を、精米業者が使うのは、業界では常識です。》
近畿の中堅卸売り業者に入社したばかりの友人が打ち明けてくれた話はもっとすごい。「同じコメが違う表示の袋に詰められ、その逆もあるんだ。びっくりしたけど、びっくりしたことに会社の人が驚いていた」という。これではあんまりだ。
東京の卸売業者の言い分はこうだ。「消費者にコメを売るには3種類の袋が必要なんだ。中身は同じでもいい。絶対2種類のコメを一度に買っていく人はいない。特に一番安いのはほとんど売れない。真ん中のが一番売れる。それが日本の消費者心理だ」。
当時、コメには新米記者だった筆者が取材するだけでも「偽りのリアリティー」がぼろぼろ出てきた。
●あんたは誰の代表なの
1995年は食糧管理法の廃止が決まった記念すべき年であった。「つくる自由と売る自由」が与えられたはずなのに11月、農水省は新しいコメ流通に移行することに対応した「検査・表示制度に関する研究会」報告を発表した。
自由の引き替えに検査の強化が必要なのは金融機関でも同じである。しかし、農水省は相変わらず、コメがブレンドされないことを前提に議論していたのが可笑しかった。
もっと首をひねったのは、日本生活協同組合連合会(生協)が、農水省の正式発表を待たずにマスコミ各社に「報告書への見解」なるものをファックスしてきたことだった。内容が漏れたのは研究会に委員を送り込んでいた結果で仕様のないことではあるが、あまりにも出来過ぎていた。
そのファックスには報告書が「消費者ニーズの多様化に的確に対応する必要性」を盛り込んだことを高く評価していたが、なんのことだか分からない。コメ販売の透明性を確保するため、流通段階での「コメのブレンド操作の禁止」ぐらいは要求すべきだった。
また「輸入米の安全性確保の万全化」をうたったことも評価したが、諸外国の何十倍もの農薬を農地に散布している日本の農業に目をつぶって輸入米攻撃に終始する姿勢はいただけない。経済協力開発機構(OECD)の報告書では、日本の単位面積当たりの農薬散布量は欧米の30倍なのである。「あんたは誰の代表なの」と叫びたくなる。
《米は、高温多湿の日本の気候にあった作物なので、米に限ればそんなことはあり得ません。同じ欧米でも日本国内でも比べる地域により二~三倍の違いはありますが、一般栽培米でも平均で一~二倍くらいだと思います。》
以上、全文を修正せずに掲載してみました。私の意見を入れさせていただいたところは、私は自信を持って私のほうが正しいと思っていますが、その他のところはほぼB.Tさんのおっしゃる通りなのが実状だと思います。
では、どうしてそんな違法行為がまかり通っているのかといいますと、この安積野では何度か米の流通の難しさに触れたことがあるので、熱心な読者にはある程度ニュアンス的には分かるのではないかとも思います。新食糧法下におけるお米の表示問題の時にも触れましたが、簡単にいってしまえば、お米は見分けが付かない商品だということです。
新食料法になって、お米の産地・産年・品種の三点セットの表示が義務づけられましたが、人気の「魚沼のコシヒカリ」は、相変わらず日本中の店頭に品切れすることなく一年中並べられています。相変わらず、生産量の数十倍が売られているようです。お米の流通の難しさを「魚沼のコシヒカリ」を例にして述べてみましょう。
消費者がなぜ、倍の値段もする「魚沼のコシヒカリ」を買うのでしょうか。それは、値段の高い「魚沼のコシヒカリ」は、おいしいはずだと思っているからでしょう。一番高いお米を食べているんだということに満足しているだけならそれでも良いのですが、実際には、「魚沼のコシヒカリ」の中にもおいしいものもあればおいしくないものもあります。
日本で一番人気があり高いのですから、平均的にはおいしいことは間違いないのでしょうが、「魚沼のコシヒカリ」の平均的な味よりおいしい米は、日本中に数え切れないほどあります。昨年の秋に秋田県でおいしいお米の全国大会が初めて行われましたが、優勝したのは、米どころといわれる地域ではなく、近畿地方(滋賀県だったかもしれない)の篤農家が作った名前も聞いたこともないような品種のお米でした。
ここに正直な米屋さんがいて、魚沼から仕入れた本物の「魚沼のコシヒカリ」をそのまま袋に入れて販売したところ、消費者からおいしくないという苦情が来ました。しかし、正直な米屋さんはどうすることも出来ません。たまたまおいしくない「魚沼のコシヒカリ」当たってしまったのですから。
一方、賢い?米屋さんは、魚沼から仕入れたコシヒカリを自分で食べてみたり食味計で計ってしてみたりしたらおいしくなかった。しかし、魚沼のコシヒカリに味の保証は付いていませんので返品は出来ません。そこで味が良かった「福島のコシヒカリ」を「魚沼のコシヒカリ」の袋に入れて売ったら、消費者からは、「やはり魚沼のコシヒカリはおいしいわね。」と喜ばれました。
はたして、消費者会員さんはどちらの米屋さんが正しいと考えるでしょうか。これが業界の常識の裏側であり、農林省も生協の幹部の人も、これに答えを出せないのに、建前だけで正義を通そうとしているから、正直な米屋さんはつぶれてしまうのです。本当の正当論から言えば、お米に産地や産年、品種など、絶対に保証できないものは一切記入を許さず、その小売店(または精米メーカー)の責任で、味によって価格を決め独自のブランドで販売させるべきなのです。
「福島のコシヒカリ」とか「宮城のひとめぼれ」という表示ではなく、「〇〇屋の特上米」とか「もち米【松】」という表示しか許されなくすれば良いわけです。以前はそういう流通だった時もあったのですが、産地ブランド人気が逆に流通の実体をねじ曲げてしまったようです。
長くなりましたので、この辺にしておきます。ちなみに、私たちARUではもちろんブレンドは一切していません。ただし、同じ生産者や同じ地区で作った同じ品種のお米でも味にブレがあるので、味を均一にするために同じ品種間の混合(ブレンド)はしています。長々とお読みいただき有り難うございました
安積ライスファーマーユニオン代表 安藤嘉雄 aru@oregano.ocn.ne.jp
●少々、異議あり
伴 武澄 様
栃木県喜連川町 鈴木 一雄
僕は、小さな兼業農家です、僕たちのような農家は農業所得を生活のかてにする事は出来ない時代になりました、でも永い時代をへた農民の血とでもいいますか、農業(米つくり)を止めて、田を荒らしておくことは出来ません。
今日、「驚くべきコメ流通の実態・消費者だましのテクニック」を読み、「<だが、農家も、集荷業者(農協)も、系統組織(県経済連)、卸売り業者、小売店。誰に聞いてもコメを混ぜている。」との表現にて、農家も別な品種のコメのブレンドに加担しているかのような記事を見て、”僕自身”としては納得いきません。
なぜなら、僕の地域では、早稲は、早稲の時期に出荷してしまいコシヒカリはコシヒカリの時期に出荷してしまいますから、ブレンドするコメがありません、また検査官は、コシヒカリかそうでないか判るとも言います。(もっともブレンドを見破れるかどうかは別でしょうが?)自家消費&縁故の方に頼まれているコメは保管していますが自家消費&縁故米は、一番美味しいとされるコシヒカリを保管しますからブレンドうんぬんになりません。ちなみに僕自身は、コシヒカリのみ作付けです。
ただし、残念ながら、消費者の口に届くコメが、農家の出荷したそのままの単品かどうかは、疑いをぬぐえません。僕の町に、フィオーレ喜連川という住宅地が出来ましたが、そこで知り合った方から、おコメは何処が美味しいですかと質問をうけ、通常僕たちの近隣で美味しいと言われる地域を教えてあげました。
僕の水田もその地域のほぼ中心に位置してますので、宜しかったら食べてくださいと、少量ですが、贈呈いたしました。
後日、美味しいので是非譲ってくださいとの連絡がありましたが30Kgしか譲れませんでした。保管米は自家消費の分しかなかったのです。で、取り入れ前に保管しておくよう頼まないと一年分は手に入らない事コメは自然の産物なので、年によっては、腹白米等が入ることなど説明しました。
ここで判ることは、農家から直接採れたままのコメは美味しいという反応が消費者からあったことです。
僕はコメの流通については素人ですから、よく判りませんが、人づてに聞いた話しでは、コメ屋さんは、売れ筋の美味しいコメだけ購入出来なくて(コメの美味しさは、品種もさるものながら、採れた土地が大きく影響するのかも知れません。)抱き合わせで、美味しくないとされるコメも買わなければならないとか?これでは、コメ屋さんはブレンドしないと経営が成り立ちませんね。
これは、質問ですが、小売のコメ屋さんに来る以前の流通段階での混ぜ米というのは無いのでしょうか。この辺が凶元といえませんか?(記事のなかに混ぜものが有ると書いてありますね)僕も、自分と周辺の仲間の農家のことしか知りませんので自身をもって、全部の農家が混ぜコメについてシロだとは言い切れませんが、僕の狭い視野からは、農家が混ぜコメに大きく加担しているとは思えません。ちなみに僕たちの所は30Kの紙袋による出荷です。(農協のライスセンターは別)後、付け加えますと、ご承知かと思いますが、コメの袋には生産者として自分の名前が書かれてます。でも、消費者にこの名前は届かないですね。
秋田の農家の方が「あきたこまち」に滋賀の「日本晴れ」を混ぜているのですか?それとも、秋田の自分の所の、別の品種を混ぜているのですか。流通段階で、農家が表示した物と別なものが混ざったりする事は消費者を愚弄にするのみならず、農家をも馬鹿にする行為に思えます。
この記事を読んで、コメの消費拡大は絶望的かも知れませんね、美味しいコメを消費者に届けられなければダメですから。この、文章のなかに、僕の無知、思い違いの部分、多々有ると思いますがお許しを、願います
これからも、ご活躍の程、御期待申しあげます。kazsuzk@beige.ocn.ne.jp