これほど愛された国家のトップはいただろうか。1989年、蒋経国総統の死によって副総統の地位にいた李登輝氏は台湾という国家の指導者になり、国民党独裁政権に政治の自由をもたらし、1996年、総統選を実施し民選総統に就任、台湾を民主国家に蘇えらせた。その功績は偉大だ。加えて日本統治時代の再評価を行い、台湾農業の父と言われ、慕われる八田與一を歴史に復活させるなど日台のかけはしとして尽力した。大陸の中華人民共和国とはつかず離れずの微妙な外交政策を継続し、台湾企業の大陸でも活動に道を開いた。台湾資本の導入は中国経済の成長にとって欠かせない大きな要因だった。そうした点においても中国は台湾に感謝しなければならない。その功績を考えれば、中国は武力での「台湾解放」など口にすべきことではないはずだ。